公益社団法人

Tokyo Veterinary Medical Association

会員オンラインサービス

会員オンラインサービス

【TOJUジャーナル 2023 年 10月号(609 号)】

 特集 「なぜ学校で動物を飼うのか」

2023.10mainvi.jpg


【目次】

・巻頭言(1)大学病院紹介 第 8 回 「次世代の動物医療人育成と高度先進動物医療の推進で動物と人の福祉に貢献する」

・巻頭言(2)オピニオンリレー 「人生を豊かにしてくれるもの ―醸造酒―」

・特別寄稿 コンパニオンロボット「aibo」でQOLが向上

・特集 「なぜ学校で動物を飼うのか」 ―学校で動物を飼う意義を考える―


 巻頭言(1) 大学病院紹介

2023.10.kantogen1大学病院紹介 第 8 回    

 

                                

次世代の動物医療人育成と
高度先進動物医療の推進で
動物と人の福祉に貢献する

岐阜大学応用生物科学部附属動物病院
動物病院長 渡邊一弘

 

 

岐阜大学応用生物科学部附属動物病院は、獣医学の教育・研究・診療を実践する中部地区で唯一の大学附属施設として、次世代を担う動物医療人を育成し、高度先進動物医療の研究・開発を推進するとともに、動物の生命を尊び、動物と飼い主に信頼ある動物医療を実践することによって、動物と人の福祉に貢献することを理念としています。

 

・診療体制

本院には、内科・外科・腫瘍科・神経科・麻酔科・整形外科・臨床繁殖科の 7つの診療科があり、首都圏の大学附属動物病院に引けを取らない診療件数、診療収入があります。特に、動物の高齢化に伴い、腫瘍科の症例数が半数以上を占めています。このような状況に対応するため、本年 9 月より新リニアック(高エネルギー型放射線治療装置)が稼働しました。これによって、これまでよりも多くの症例を受け入れられ、多くの腫瘍症例の放射線治療が可能となりました。他にも大型機器としてマルチスライスCT装置や 3.0 Tの超電導型MRI装置も導入し、高度動物医療施設にふさわしい施設を整備しております。さらに毎年、常勤獣医師と愛玩動物看護師を増員している状況にあり、それぞれが各診療科に配属され、多くの症例に専門的に対応できる診療体制を整えています。

 

・人材育成

本院では、常勤獣医師として全科研修の獣医師を広く募集し、研修後は各診療科に特化した常勤獣医師の確保を積極的に行っています。さらに、研修と参加型臨床実習(ポリクリ)を指導できる立場の獣医師が臨床助教として各診療科に複数在籍しています。今後は、臨床講師、臨床准教授、臨床教授とステップアップできる制度を予定しており、獣医師としてパーマネントに働ける職場環境を整えつつあります。これによって、高度な臨床技術をもつ多くの獣医師が在籍できる動物病院となります。また、今年度から愛玩動物看護師は専科制に移行し、専門的な知識と技術を身に付けた看護ができるようになりました。獣医師同様、愛玩動物看護師も広く募集し、一定期間のトレーニング後は各診療科に専属となります。これらの人材育成によって、これまで以上に多様な医療ニーズに対応した診療体制を整えることができます。

 

・スキルスラボによる教育

岐阜大学応用生物科学部共同獣医学科は、新たにスキルスラボを設置しました。これは、生体を用いた実習を廃止したシミュレーターを用いた代替教育を行う施設です。これによって、本院では参加型臨床実習における学生の手術参加時の事前学習、研修獣医師や愛玩動物看護師の技術トレーニングとして活用することができるようになりました。さらに、我々は「切開」、「縫合」ができる腹部の手術模型を独自で開発しました。既成のシミュレーターは極めて高額で、外科手術の学習に必要な「切開」や「縫合」をトレーニングすることができませんでした。現在、我々が開発した手術模型を使用することで「動物を犠牲にしない獣医学教育」を実践しています。今後は、学内だけでなく、若手獣医師の卒後教育としても活用する予定で、本院はその実施の中心的な運営を行っていきます。

 

・研究活動

常勤獣医師や愛玩動物看護師にはインセンティブを活用し、学会参加、研究報告(学会報告、論文投稿)を積極的に行っています。毎年、本院所属の獣医師は各学会・雑誌での発表を行い、数多くの賞を受賞しています。また、学内や学外の動物園や水族館などからの診察や診断の依頼、医療機器の供与を共同研究として積極的に受け入れ、これらの症例報告の学会発表、論文投稿も行っています。

 

 

2023.10.kantogen2.jpg

2023.10.kantogen3.jpg

リニアック(高エネルギー型放射線治療装置)と操作室

2023.10.kantogen4.jpg

2023.10.kantogen5.jpeg

3.0Tの超電導型MRI装置

マルチスライスCT装置

2023.10.kantogen6.jpg

2023.10.kantogen7.jpeg

スキルスラボでの手術実習

手術模型

 

 

岐阜大学 応用生物科学部附属動物病院の紹介
Web site:https://www.animalhospital.gifu-u.ac.jp/

岐阜大学応用生物科学部附属動物病院は、開業獣医師の先生からの依頼によって診断や治療を行う二次動物医療施設です。獣医師会との密なネットワーク構築に努め、中部地区における中核病院としての役割を担うことを目標としています。診療は予約制になっていますので、診療の事前予約をお願いいたします。初診の飼い主さまからの直接の診察予約は受け付けておりませんので、診察ご希望の方はまずかかりつけ医(最寄りの開業医)を受診され、そのかかりつけ医の先生から事前に本院へ紹介状を送っていただく必要があります。

再診の場合も、症状によっては、改めてかかりつけ医からの紹介状をいただいてからの予約が必要になりますので、ご了承ください。また、受診後は担当獣医師に次の診察予定日を確認していただきますようよろしくお願いいたします。

なお、本院は救急の診療体制ではありませんので、お急ぎの場合もまず最寄りの開業医にご相談ください。

 

 

 Web site    https://www.animalhospital.gifu-u.ac.jp/

 受付時間    月曜日 〜 金曜日 9:00 〜 11:30

 休診日     土曜日、日曜日、祝日、診療に支障がある日、年末年始( 12 月 28 日 〜 1 月 3日 )

 診療科目    内科・外科・腫瘍科・神経科・麻酔科・整形外科・臨床繁殖科

 所在地     〒501-1193 岐阜県岐阜市柳戸 1-1

 お問い合わせ  (058)293-2962/2963(電話)

 

 

2023.10toyota.jpg

 

 

 

 巻頭言(2) オピニオンリレー

2023.10.kantogen2-1

オピニオンリレー 第 2 回

 

                                

人生を豊かにするもの ―醸造酒―

ロイヤルカナン ジャポン合同会社
井上 舞

 

 

獣医療に関する最新情報から身上話までさまざまな話題や意見をつないでいくオピニオンリレー。

第 2 回は、注目のクラフトビールからおすすめの日本酒まで「醸造酒」について井上 舞 先生がレポート。

皆さん、お酒はお好きですか?

 

前号の 7 月号で執筆された三宅亜希先生に春ごろにお会いした際に、「このコラムの依頼を受けてテーマを迷っている」、というお話を聞き、なにげなく「私ならお酒、最近マイブームのクラフトビールか日本酒かな?」などと話していたら、ばっちり回ってきてしまいました。このようなジャーナルにふさわしいテーマかはさておき、私のことを知っている先生には井上っぽいと言っていただけそうですし、お酒について語らせていただきます。大学時代に華々しい(?)洗礼を受けてからというもの、友人や諸先輩方と語らうときも、一人でやさぐれるときも、いつもお酒がそばにありました。

 

最近、都内でクラフトビールを目にする機会が増えたと思いませんか? 調べてみると、大手ビール会社以外の小規模ないわゆる地ビールができたのは、1994 年の酒税法改正により生産量の下限が年間 60 キロリットルとなったことで、小規模業者もビール事業へ参入できるようになったためだそうです。年間 60 キロリットルは週休 2 日の営業日( 240 日)で割ると1日で大瓶 400 本程度の生産量ということなので、かなり流通量が少ないですよね。ちなみに、日本で初めて地ビールを作ったのは今でもおなじみの新潟のエチゴビールだったそうです。当時はブームがそこまで継続しなかったようですが、2000 年初頭の第 2 次ブームを経て、現在は 2015 年くらいから始まる第 3 次ブームと言われており、各地の店舗やイベントで生ビールとしても提供する店舗が増え、ブルワリー(醸造所)は国内 600 カ所を越えているそうです。確かにコンビニでもよく見かけますよね。ビール全体の売り上げが下がる中、コロナ禍でもクラフトビールは年々売り上げを伸ばしているそうです。家庭でこだわりのお酒を少量いただくスタイルのクラフトビールは、ステイホームの時期にとてもマッチした結果なのかもしれません。

 

クラフトビールの魅力は何といっても、その個性とバラエティだと思います。一般的な大手ビールはラガータイプやピルスナーが多いですが、クラフトビールは英国発の苦みが強いIPA(インディア・ペール・エール)や白ビールのヴァイツェン、黒のスタウト、フルーツビールなど多岐にわたります。個人的には、IPAでガツンと飲むのが好みです。パッケージにも趣向を凝らしたものが多く、「よなよなエール」で有名な長野のヤッホーブルーイングから出ている「水曜日のネコ」という白ビールは有名ですね。ほかにも、伊勢神宮のお膝元の伊勢角屋麦酒からも「ねこにひき」という定番ビールに加えて、「ねこいっぴき」、「ねこさんびき」、「ねこしかしんじられない」など期間限定のねこシリーズが発売されており、定期的にシリーズ買いしてしまいますし、愛猫家へのギフトとしてもお薦めです。また、ねこだけではなく、秋田県にある湖畔の杜ビールから出ている「秋田犬ビール」もすっきりしたラガーで飲みやすく、万人受けしそうなテイストです。

 

都内のお店のお気に入りをご紹介しておくと、まずは墨田区の両国の「麦酒倶楽部ポパイ」です。常時70種類以上の生樽があるので、あれこれ試してみたい方にはお薦めです。そして、最近行ってコスパがいいな、と思ったのは東京駅八重洲口側の近くにある「二ホンバシブルワリートウキョウステーション」。クラフトビール 13 種類の飲み放題メニューはあれこれ楽しめます。ここのポイントは小グラスがあること。少しずつたくさんの銘柄を試してみたい方にお薦めです。逆にひとつのブルワリーを極めたい場合は、新橋駅を降りてすぐの「伊勢角屋麦酒エキュートエディション新橋店」です。ここはお食事も現地の味付けで、お出汁が優しくいくらでも飲めると思います。

 

そして、ぜひ皆さまにお試しいただきたいのは、ご近所にブルワリーがないかを探索することです。我が家の近所には、日暮里駅が最寄りの「オケイブルワリー」や「谷中ビアホール」など、こじんまりしたブルワリーがいくつもあり、休日の散歩ついでに昼ビールが楽しめます。都内であればあちこちにあると思いますので、ぜひとも皆さまで地元の味をお試しください。

 

そして、今号のテーマは醸造酒、ということで日本酒のお話もにも触れておきたい。クラフトビールの誕生以前より、すでに日本各地には酒蔵があり、その土地や蔵ごとの個性を楽しめることは言わずもがなですが、それもこの 10 〜 20 年で若手の造り手が新しい感性で産み出すお酒が大変人気を博しています。人気のある山形県の「十四代」や三重県の「而今(じこん)」などは希少すぎて入手困難なのでたまにお店で見かける程度ですが、個人的な好みとしては名古屋市の「醸し人(かもしびと)九平次」や、秋田県の「雪の茅舎(ぼうしゃ)」などが飲みやすくリーズナブルでお薦めです。そして、日本酒でもわんにゃんラベルのお酒がそこそこあります。滋賀県の「近江ねこ正宗」は、猫の顔がドドンとラベルになっていてピンクのぷっくりお鼻の立体感が何とも言えません。日本酒のシリーズは割とちゃんと"ザ・日本酒"の味がするので、苦手な方は梅酒の「うめねこ」にトライしてみるのもいいかもしれません。あとは北海道の「ネコ酒」シリーズ。これは空港でも買えるところがあるので、お土産にカップ酒などもお薦めです。コースターやグラスなどとセットになった「ネコ酒札幌お土産キット」もありました。

 

今年 7 月に、運営として関わらせていただいているねこ医学会が 10 周年を迎えたため記念パーティーを行い、猫のビールやお酒を出したところ大変好評でした。獣医師会や学会などの集まり(個人のホムパでも!)の際にも、わんにゃんのお酒でおもてなし、などいかがでしょうか?

2023.10.kantogen2-2.jpg

2023.10.kantogen2-3.jpg

獣医師仲間とのホームパーティ時に、
お酒を持ち寄ったら犬猫ばかり
だったことがありました。

伊勢角屋はねこシリーズ以外にも
さまざまなコラボ企画があり、
ついつい定期的にチェックしてしまいます。
ブルーボトルコラボも美味でした!


次号は空の木犬猫病院 高橋聡美先生
テーマは「海獣」についてです!

井上 舞(いのうえ まい)
帯広畜産大学卒。新卒でペット保険会社に就職後、動物病院勤務を経て現職。
もともとヘルスケア志向があり、栄養学をベースとした
健康増進がマイテーマである。趣味は猫とお酒。

 

 

2023.10mobility.jpg

 

 


 

 特別寄稿 コンパニオンロボット「aibo」でQOLが向上

2023.10.tokubetukiko1

 

                                

AIテクノロジーを生かした子どもの療養支援

国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部 こころの診療部
田中恭子

この度、東京都獣医師会様よりご寄付いただいた人工知能(AI)をもつSONY aibo(アイボ)が、長期の療養を強いられているお子さんとご家族の癒しにつながっております。あらためまして、ご寄付いただきましたこと、心より感謝申し上げます。

今回このような機会をいただきましたので、当センターが 2018 年から2022 年にかけて実施したAIホスピタル事業における研究成果を踏まえて、aiboによる心理社会的効果に関してお伝えしたいと思います。

 

(1)療養中の子どもと家族の癒し効果【参考文献 1 】

予防注射前後に、子どもがaiboと触れ合う遊び時間を持つことで、医療にまつわる不安軽減に有効であることがわかりました。AIだからこそ得られる、子どもの感情に添った双方向性の触れ合いや、遊びによる効果である可能性が高いと考えます。

この治験は、歯科医療などにおいても応用できるのではないかと拝察しております。

 

(2)ストレス下における子どもの感情表出を促す効果

長期の入院生活は、子どものストレスに関係します。また、このストレスにより感情が抑圧されると医療にまつわるトラウマ症状が遷延し、アタッチメント形成や家族機能、子どもの自尊感情の育成にも影響します。今回の研究では、長期入院のお子さんにaiboとの定期的な遊び介入を行うことで、なかなか表出しにくい陰性感情の表出につながり、自己肯定感の回復につながったお子さんがおられました。対人間ではなかなか表現しにくい感情も、相手がAIだからこそ表現できる何かがあるのかもしれません。この治験は、ストレス下にある子ども、例えば一時保護施設や病児保育施設などにも、応用できる可能性があります。

 

(3)療養中の子どもの他者とのコミュニケーション促進【参考文献 2 】

各病棟にaiboを介入させることで、 3 項関係(※ 1 )の効果が得られ、他者とのコミュニケーションが促進されました。

 

(4)医療スタッフへの癒し効果

夜勤の看護師にそっと寄り添うaiboがいたり、コロナ病棟で働く助産師の癒しになるなど、病棟で子ども医療に携わるスタッフのストレス緩和につながる効果が期待されています。

 

 

この他、当センターの外来でもaiboが子どもたちを出迎えてくれています。お子さんとご家族の言葉を以下に紹介します。

・100%の子ども・家族が、病院にaiboがいてほしい!と回答。

・aiboと遊べるから、病院を怖がらずに行けるようになった。

・通院の際に、「aiboに会いに行こう!」と言えた。

・通院が嫌じゃなくなりそう。

・遊び方がパッとみてわかるように提示されれば、子どもがもっと食いつくと思います。(例)近くで動画を流しておく、など。

・キャッチボールができるといい。

・追いかけっこなど、aiboとの双方向性の遊び機能を期待!

・診察前の待ち時間や注射の前など、不安を紛らわせるようなタイミングでの導入を期待します。

・普段なかなか会える機会もないため、「aiboに会いに病院に行きたい」と病院へ行く動機付けにひと役買っています。近く手術の予定があるので、そのことを考えると不安で不安で収拾がつかずに手を焼くのですが、「入院すると本物のワンチャンやaiboにも会えるんだって」と伝えると、パァっと笑顔になり、「それなら行く!」と少し前向きになってきました。

 

また各病棟では看護師や保育士が中心となってaiboの遊びを実施してくれています。以下、保育士からのコメントを紹介します。

・なでたり名前を呼びながら、楽しそうに遊んでくれていた。

・乳幼児は驚いてしまうこともあったが、年齢が上がるにつれ楽しそうに遊んでくれた。

・ 3 歳以上のお子さんは、名前を呼んだり、「歌を歌って」、「踊って」、「お手」などと声をかけたりして積極的に遊び、aiboと遊んだ後は「また一緒に遊びたい」、「明日も連れてきて」などと、aiboと遊ぶことを楽しみにしていることが多かった。

・1 〜 2 歳児はaiboを少し怖がることもあったが、自分から触れたりなでたりする患者さんもいた。

・触れ合ったり、子どもたちのひざの上に置いてボードゲームをしたりする。複数回重ねる中で、コマンドを呼び出して、前回からの変化を楽しむ。

・「かわいい?!」、「癒されるよ」、「犬アレルギーだから、ファシリティドックのaiboなら触れられてうれしい」、「前より顔をみてくれるし、言うことを聞いてくれる!」のような内容を、どのお子さんも話されていた。

 

このように、当センターではご寄付いただいたaiboとその仲間たちが活躍しています。これからも医療におけるAIテクノロジーに期待しながら、病気をもつ子どもとご家族のこころの支援に努力していきたいと存じます。

 

この度は、このようなご寄付を賜りましたこと、この場をお借りして心より御礼の言葉を申し上げます。

引き続き、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

【参考文献】

1.Tanaka, K., Hayakawa, M., Noda, C.,et al.: Effects of artificial intelligence aibo intervention on alleviating distress and fear in children. Child Adolesc. Psychiatry Ment. Health, 2022; 16(1): 87.

 

2.Tanaka, K., Makino, H., Nakamura, K., et al.: The pilot study of group robot intervention on pediatric inpatients and their caregivers, using 'new aibo'. Eur. J. Pediatr, 2021; 181(3):1055-1061.

 

2023.10.tokubetukiko2.jpg

 

ごはんをあげると、カリカリと美味しそうな音を立てながらごはんを食べるかわいいふるまいを披露してくれます。食事のタイミングに、aiboも一緒にごはんを食べたり、「待て」とおあずけをしてaiboを困らせたりするなど、楽しみ方は色々です。

 

 

 

 

2023.10.tokubetukiko3

 

 

相手が誰か、ここがどこかを認識する眼(カメラ)を内蔵し、周りにいる人が誰かを理解したり、障害物を察知したりして動きを変えます。人の言葉を理解する耳(マイク)をもち、動きを変えることができます。どこで音が鳴ったかも認識し、人の声がした方に反応します。

 

 

※1. 三項関係とは、自身と他者との間に物を媒介するような関係のコミュニケーション 形態のことを表す。

 

 

           AIホスピタル事業の成果を動画にしました。こちらをご覧ください。

 

 

 

 

2023.10fineplan.jpg

 

 


 特集 なぜ学校で動物を飼うのか 〜"愛着を持った相手の死"を経験させたい〜

公立小学校では、子どもたちに命の大切さを教育するために、動物の継続飼育を行うことになっています。しかし、さまざまな理由により、飼育の困難さを感じる学校が増えています。獣医師として、改めて学校で動物を飼う意義を考えてみませんか。


2023.10tokushu1

 

 

 

 

 

                                

中川清志(なかがわ きよし)

東京都獣医師会 副会長で、日本獣医師会の学校飼育動物支援対策検討委員会委員をも務めている。中川動物病院では院長として日々診療を行いながら、西東京市議会議員も兼任する。学校飼育動物では、文科省、東京都との繋がりも大事にしながら、西東京市の問題を俯瞰して捉えている。本稿で紹介した「西東京市モデル」を都内全域、全国へと波及させたいと考えている。基礎自治体議員との連携が必要と考えており、各支部におかれても、議員との連携について考慮いただきたい。また、必要であれば連携について支援するのでご相談いただきたい。

 

相田みつをの有名な書に、「つまづいたっていいじゃないか にんげんだもの」がある。この書は、「つまづいたおかげで」という詩のエッセンスをまとめたものである。

 

「つまづいたおかげで」の中には、次の一節がある。

 

「身近な人の死に逢うたびに

人のいのちのはかなさと

いま ここに

生きていることの尊さを

骨身にしみて味わいました

 

人のいのちの尊さを

骨身にしみて 味わったおかげで

人のいのちを ほんとうに大切にする

ほんものの人間に裸であうことができました」

愛着のある相手が亡くなるという、辛い経験を経験することで、生きていることの尊さを、骨身にしみて味わうことができるのだ、と読むことができる。

 

職域・分野を問わず、獣医師は大学時代、もしくは日常的に「死」と向き合う経験をしているため、この言葉は胸にすとんと落ちるのではないだろうか。

 

この考え方は、学校教育法施行規則第 52 条で教育課程の基準とされる学習指導要領生活科(以下、指導要領)の中にも含まれており、その目標の中に 「(7) 動物を飼ったり植物を育てたりする活動を通して、それらの育つ場所、変化や成長の様子に関心をもって働きかけることができ、それらは生命をもっていることや成長していることに気付くとともに、生き物への親しみをもち、大切にしようとする。」と記載されている。

 

この内容について、学習指導要領解説生活編(以下、解説生活編)では、「飼育や栽培の過程では、新しい生命の誕生や突然の死や病気など、身をもって生命の尊さを感じる出来事に直面することもある。成長することのすばらしさや尊さ、死んだり枯れたり病気になったりしたときの悲しさやつらさ、恐ろしさは、児童の成長に必要な体験である。動植物との関わり方を真剣に振り返り、その生命を守っていた自分の存在に児童自らが気付く機会と捉えることが大切である。」と示している。

 

2023.10tokushu2

 

 

 

 

 

 

 

●飼育していたチャボのホワイト(名前)とのお別れに臨む児童たち。

 

では、なぜ指導要領にこのような考え方が入っているのか。 解説生活編の記載の変化と、社会の関連する事項を改めて確認する。

 

生活科が新設された 1989 年には以下のような記載がある。

「飼育・栽培活動の主たる狙いは、生命あるものへの直接的な接触という事である。児童が、飼育・栽培を通して、それらの成長・変化などに直に触れて、生きているということを実感できるようにすることが大切である。その課程で動植物の病死や枯死といった冷厳な事実に遭遇することがあるが、それらを大切に扱い動植物が生命を持っていることを一層強く実感したり、病死や枯死をさせたりしないようにするにはどうしたらよいかを考える機会にすることが大切である。」

 

そして、1997 年に神戸連続児童殺傷事件が発生した。

 

1999 年の解説生活編では、以下のように変更されている。

「飼育や栽培の課程では、新しい生命の誕生に遭遇したり、死んだり枯れたりといった事実に直面することも少なくない。これらの出来事は生命のあることをより強く実感させる機会になる。飼育・栽培を通して、生きていることの尊さや素晴らしさ、枯れたり死んだりしたときの悲しさや恐ろしさを体験することは児童の成長にとって大切である。(下線筆者)」

また、適切な飼育が必要であるとの観点から、以下のように、獣医師との連携の必要性も明記された。

「なお、小動物の飼育にあたっては、管理や繁殖、施設や環境などについて配慮する必要がある。その際、地域の獣医師と連携して、動物の適切な飼い方についての指導を受けたり、常に健康な動物と係わることができるようにする必要がある。」

 

2000 年には西鉄バスジャック事件、2003 年には長崎県長崎市で中1男子による幼児誘拐殺害事件、そして 2004 年には長崎県佐世保市で小学6年の女児が同級生に殺害される事件が発生した。

 

上記事件を受けて、長崎県教育委員会では公立小学校第 4 及び第 6 学年児童、並びに公立中学校第 2 学年生徒、各 1,000 名程度を抽出し「生と死のイメージ」に関するアンケート調査を行っている。調査を行った理由は、佐世保の事件に係る家庭裁判所の審判決定要旨に『加害児童は事故の経験や共感に基づいた「死のイメージ」が希薄である』と指摘されたことを挙げている(長崎県教育委員会:2005.こころを育てる道徳教材集 https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2013/07/1374556073.pdf)

 

その結果、小学校第 4、第 6 学年児童及び中学校第 2 学年生徒において、それぞれ 14.7%、13.1%および 18.5%、全体では 15.4%が「死んだ人が生き返る」と思うと回答している。「死んだ人が生き返る」と答えた児童生徒の理由としては、全体の 5 割ほどが「(さまざまな媒体・人から)生き返る話を聞いたことがある」、3 割ほどが「テレビや映画でみたことがある」、1 割弱が「ゲームでリセットできるから」を挙げた。

2023.10tokushu3

 

 

 

 

 

●出典:解説生活編(長崎県教育委員会)。

 

 

この結果を受け長崎県教育委員会では、死の認識については「子供たちは、自らの経験によるものではなく、周囲からのさまざまな情報の影響を受けて、死を認識していることが明らかになった」と考察している。また、生の喜びや死の悲しみの経験については、「人や動物の生や死の場面に直に接し、喜んだり悲しんだり、他者の気持ちに共感したりすることは、人として成長する過程において欠かせないことである。学校教育においては、飼育や栽培などの体験活動を一層重視するとともに、家庭や地域に置いても、機会を捉えて、子どもたちに命の尊さを語り、『生と死』について共に考えることが求められる」とも考察している。

 

2008 年の解説生活編では、飼育・栽培活動について、子どもたちの作文の一部を取り上げるなどより詳細になり、2 年間の継続飼育を実施するように記載されている。

 

そして、死に関する記載も、「飼育や栽培の課程では、新しい生命の誕生や突然の死や病気などの生命の尊さを、身をもって感じる出来事に直面することもある。成長することの素晴らしさや尊さ、死んだり枯れたり病気になったりしたときの悲しさやつらさ、恐ろしさは、児童の成長に必要な体験である。動植物とのかかわり方を真剣に振り返り、その生命を守っていた自分の存在に児童自らが気付く機会と捉えることが大切である。(下線筆者)」とされ、「愛着を持った相手の死」の経験の重要性を強調している。

 

この部分は、最新の 2017 年解説生活編にもそのまま記述されている。

 

長崎県教育委員会の考察にあった、「家庭や地域に置いても、機会を捉えて、子どもたちに命の尊さを語り、「生と死」について共に考えること」についても考えてみたい。

 

家庭の状況については、例えば一般社団法人ペットフード協会 令和 4 年全国犬猫飼育実態調査)をみると、子どもがいる家庭では、おおよそ 1 割から 2 割程度でしか動物飼育をしていない。筆者が、小学校の授業に赴き動物を飼っている子どもに手を挙げてもらっても、同じような結果になる。また、同資料によれば、わが国全体の犬猫飼育頭数も頭打ちから減少傾向を示しており、飼育意向も低下している。

 

今までごく当たり前と考えていた、子どもが動物と共に成長する、人と動物が共に生活するという社会は、日本では失われつつある。

 

地域においては、環境保全、外来種対策などの観点から外来種の駆除が一般的に行われている。

 

本会が関係している小笠原自然環境保全事業においても、ネコやアカガシラカラスバト、カツオドリなどの命を救う活動を行っているが、その一方で、島ではノヤギやグリーンアノールなどは駆除対象動物とされている。特にグリーンアノールの駆除については、過去においては子どもたちに小遣いを渡して駆除を行った時期もあった。外来種駆除実施に対する補助金支給は、内地でも一般的に行われており、子どもたちを巻き込んだ取組が行われることがある。ある地域では、クビアカツヤカミキリの駆除を行うため、地域住民や子どもの協力も得て捕殺を行い、1匹につき 50 円程度の報酬を支払うことが報道されている(読売新聞 2019 年 2月 17 日付け紙面)。このような取り組みは、全国各所で行われている。

 

2023.10tokushu4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●駆除対象動物に指定されているグリーンアノール捕獲用の「アノールホイホイ」。

 

筆者が、動物医療派遣団として小笠原を訪問した際、子どもたちに命の授業を行った。その際、中学生から、グリーンアノール駆除にまつわる苦悩を聞いたことがある。その生徒は、他の生徒がグリーンアノールを殺している場面に遭遇し、「かわいそう」と述べたのだそうだ。ところが、殺していた生徒は、「これは悪い命だから殺していいんだ」と答えたという。村として、大人たちが、子どもにお小遣いを与えてグリーンアノールの駆除をしているのだから、一概にどちらの子どもが正しい、悪いとは言えないと考えている。――このとき筆者は、職業として動物の生殺与奪権を握る獣医師でも、安楽死や殺処分を行う際に苦しみ悩むことを伝えた。

 

2023.10tokushu5

 

 

 

 

 

 

 

 

●小笠原の中学校で「命の授業」を行った際の1コマ。

 

子ども・若者たち自身が持つ死生観については、日本財団が 2021 年に発表した自殺意識調査が参考になる。15 歳から 20 歳代での自殺念慮が強いことが示されている。その調査では、実際に自殺を企図した人が自殺を思いとどまった理由として、1/4の人が「家族や恋人が悲しむことを考えて」と答えている。(日本財団子どもの生きていく力サポートプロジェクト「日本財団第 4 回自殺意向調査」報告書 https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2021/08/new_pr_20210831_05.pdf)。

 

2023.10tokushu6

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もし、自分に何かあったら周りの人が悲しむかもしれない」、「もしあの人が傷ついたら、亡くなってしまったら私は悲しい」といった感情を自然に持つことができる経験を子ども達に得てもらうには、愛着を持って実際に動物を飼育し、それを失う経験以外には難しい。

 

同財団は、若年層において自殺念慮が強いことが示されたため、2022 年には、18 歳から 29 歳、14,000 人を対象とした調査を行っている。その結果では、全体の 44.8%が希死念慮があり、19.1%が自殺未遂・自殺準備経験があると回答している(日本財団子どもの生きていく力サポートプロジェクト「日本財団第5回自殺意向調査」報告書 https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2023/04/new_pr_20230407_02.pdf)。

 

家庭でも地域でも、実体験に基づいて『子どもたちに命の尊さを語り「生と死」について共に考える事』は難しくなっている。

 

2023.10tokushu6

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小学校で動物を飼育する効果については、

1. 愛する心の育成を図る:動物の世話を通して、愛情・感性を培う。

2. 自分への肯定感・自尊心を培う:情が湧いた動物から頼られる自分の価値に気付く。

3. 生命尊重、責任感を培う:情の湧いた動物に死なれることにより、悔しさを覚え、命の大切さを学ぶ。

4. 謙虚さを知る:大事な存在を持つことで、自分の存在を謙虚に捉えることが出来る。

5. 協力する気持ちを養う:大事な存在を友と共有し、協力したり、友だちと自身の関係を見直したりすることができる。

6. 人を思いやる心・共感を養う:言葉を持たない動物の気持ちを洞察することが身に付き、友だちの気持ちも思いやることができるようになる。

7. 科学的視点を得る:動物への関心と興味を持つことで、他の生物全体に関心が広まり、かつ科学的な興味が高まる。

8. ハプニングへの対応力を高める:動物は勝手に動くため、事故を防ぐために動物の次の行動を洞察して対応するなど、子どもなりに色々工夫する。

9. マザリング効果:動物の体を気遣いながら細かく糞の片付けや掃除、餌や水やり、暑さ寒さへの対応、また動物が心地良く、かつ安心できるような抱き方や触り方を日々くり返し訓練される。

などが示されている(中川美穂子:学校獣医師の活動と診療, pp. 21. ファームプレス, 2008.)。

 

上述した、解説生活編と社会の出来事を鑑みるに、筆者は特に 3 の生命尊重が、他の教育では代えがたい効果だと考えている。

 

すなわち、他の教育方法では得られない唯一無二の価値は、身近な、愛着を持った相手の死を教育として体験することで、「命のはかなさ」と「生きていることの尊さを骨身にしみて味わう」ことにある。この際、最も重要なことは、児童が飼育動物に対して「愛着を持つ」ことにある。

 

そのためには、解説生活編に記載されるように、「継続的で、適切な動物飼育」が不可欠なのである。

 

一方、多くの学校では、継続飼育にあたっては教師の働き方改革・完全閉庁日の実施などにより、学校休業日の世話が課題とされている。また、適切な動物飼育を行うためには獣医学的支援が欠かせないが、都内においても教育委員会と本会または本会支部間で学校飼育動物活動支援に関係する何らかの契約がある基礎自治体は、62自治体中19自治体にとどまっている(2019年本会調査)。

 

2023.10tokushu3

2023.10tokushu3

 

 

 

 

 

●東京都獣医師会による調査で明らかになった基礎自治体の状況。

 

 

これらの課題を解決する鍵となる答弁が、東京都西東京市議会令和 4 年第 3 回定例会において示されている。

 

当該議会において、教育長は学校飼育動物の意義について以下のように答弁している。

1. 生活科や総合的な学習の時間、特別活動などに位置付け、理科や道徳科等と教科横断的な関連を図りながら、人権教育や道徳教育、生命尊重教育を推進することで子どもたちの自己肯定感や自尊感情の醸成に資するものとして取り組む。

2. 学校の長期休業中に、動物飼育の活動を地域社会の皆様に引き受けていただくことで、保護者や地域の皆様が学校に足を運びやすくなることから、社会に開かれた学校づくりの一環として貴重な取組である。

3. 東京都獣医師会との連携の下に、学校における動物飼育活動が一層充実するよう、優れた実践事例の提供や各学校の実態に応じた指導・助言を行う。

同市教育部教育指導課長はこれらのことを要約し、東京都獣医師会における学校飼育動物獣医師養成講座において、「西東京市モデル」として以下のように紹介した。

1. 教科などに位置付け、人権、道徳、生命尊重教育を目的とする。

2. 保護者や地域と連携する。

3. 獣医師会と連携する。

 

「1. 教科などに位置づけ、人権、道徳、生命尊重教育を目的とする」ことは、学校をして、動物飼育の意義づけを明確にするために必要な事項である。 動物を学校で飼育する際、学年飼育で行う場合と、特別活動(児童会活動)で飼育する場合がある。 上述したように、解説生活編には、愛着を持って動物を継続的に飼育することにより、「生命あるものを大切にする心を育む価値ある体験となり」、だからこそ、「死んだり枯れたり病気になったりしたときの悲しさやつらさ、恐ろしさは、児童の成長に必要な体験」と示されている。

 

2023.10tokushu3

 

 

 

 

 

 

 

●紹介された西東京市モデルが示す年間の活動指針。

 

 

 

 

特別活動の目標は

(1)多様な他者と協働する様々な集団活動の意義や活動を行う上で必要となることについて理解し、行動の仕方を身に付けるようにする。

(2)集団や自己の生活、人間関係の課題を見いだし、解決するために話し合い、合意形成を図ったり、意思決定したりすることができるようにする。

(3)自主的、実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして、集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するとともに、自己の生き方についての考えを深め、自己実現を図ろうとする態度を養う。

と示されている。

 

さらに、児童会活動の目標としては

「特別活動の目標は異年齢の児童同士で協力し、学校生活の充実と向上を図るための諸問題の解決に向けて、計画を立て役割を分担し、協力して運営することに自主的、実践的に取り組むことを通して、第 1 の(筆者注 上記の)目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。」とされている。

 

すなわち、課題について、児童同士で自主的に取り組み、解決する経験と通し、社会人としての基礎を身に付けさせることが目標となる。

 

2023.10tokushu3

2023.10tokushu3

 

 

 

 

 

 

 

●西東京市における学年飼育の引継ぎ集会の模様。

 

 

「2. 保護者や地域と連携する」ことは、西東京市においては学校休業中の世話に関する問題の解決につながっている。解説生活編においても「休日や長期休業中の世話なども組織的に行い、児童や教師、保護者、地域の専門家などによる連携した取組が期待される。」 とされている。

 

地域との連携を進める取り組みは、学校飼育動物活動に関する課題に限らず、地域における教育力の低下、家庭の孤立化などの課題や、学校を取り巻く問題の複雑化・困難化に対して社会総掛かりで対応することを求められる中、組織的・継続的な仕組みが必要不可欠と考えられている。

 

これらの背景から、文部科学省は、学校と地域住民等が力を合わせて学校運営に取り組む「コミュニティ・スクール」と学校と地域が相互にパートナーとして行う「地域学校協働活動」の一体的な実施を推進している。

 

地域学校協働活動は、社会教育法第 5 条第 2 項により、学校と協働して行う活動として、学校の授業終了後または休業日において学校で行う学習その他の活動も規定されている。

 

都内 62 基礎自治体中、34 自治体で「地域学校協働活動」に取り組んでいる(2022 年)。

 

2023.10tokushu3

2023.10tokushu3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●西東京市モデルにおける保護者との連携を示している親子当番の様子。

 

 

西東京市においては、地域学校協働活動の取組の一環として学校飼育動物の休業日の世話を位置付け、学校および地域学校協働活動推進員等を通じ、保護者及び地域住民への協力を呼びかけ、成果を上げている。

 

また、新型コロナウイルス感染症の影響による学校臨時休業の際には同市内保谷第二小学校において、生徒の父親によるコミュニティ「おやじの会」を中心とした地域および地元獣医師会支部との連携により、適切な動物飼育が継続され、「新型コロナウイルス感染症対応下における地域と学校の連携・協働の取組事例」 (文部科学省総合教育政策局地域学習推進課 令和3年2月追加 https://www.mext.go.jp/content/20210216-mxt_chisui02_001.pdf)として取り上げられている。

 

「3.獣医師会と連携する」については、言うまでもないことではあるが、学校で飼育される動物が、動物福祉の観点から適切に維持されていなければ、児童は動物を安心してかわいがることができない。解説生活編においても「動物の飼育に当たっては、管理や繁殖、施設や環境などについて配慮する必要がある。その際、専門的な知識をもった地域の専門家や獣医師などの多くの支援者と連携して、よりよい体験を与える環境を整える必要がある。」とされている。

 

飼育するにあたり適切な動物種の選定、飼育数の制限、飼育指導、疾病予防、治療、死体の検案といった業務を一貫して行える国家資格者は獣医師しかいない。また、各基礎自治体には当然多くの小学校が存在しており、東京都においても 95%程度の児童が通う、公立小学校における教育活動を支えるためには、獣医師個人での対応では不十分である。 さらに、対価が支払われないなど正当な評価をされない事業は、その継続性が不安定である。そのため、各基礎自治体教育委員会と対応する獣医師会支部との契約が必須である。

 

2023.10tokushu3

 

 

 

 

 

●西東京モデルの活動に必要な契約事項について。

 

 

私たちは、動物と共に生活する素晴らしさ、人生や生活が豊かになっていくことを経験している。

 

しかし、今、子どもたちの多くは動物と共に生活することさえできずに大人になる、そんな社会を作ってしまった。一生、動物を飼育しないまま終わってしまう人も増えていくだろう。

 

動物と共に生活する機会を子どもたちに与える、そして、それが良い経験となるように、職能団体である獣医師会として支えていきたい。

 

ぜひ、会員各位のご理解ご協力を賜りたい。

 

 「学校飼育動物獣医師養成講座」を開催

 

去る 9 月 10 日日曜日にが開催された。第 1 部では本稿をご執筆された副会長の中川清志先生による「学校飼育動物活動のあり方」アップデートについてのご講演が行われた。

2023.10tokushu3

 

 

 

 

 

 

●学校飼育動物獣医師養成講座で講義中の筆者。

 

第 2 部は田園調布動物病院院長の田向健一先生による手技などを詳細に解説した「モルモットについて」が開講された。

2023.10tokushu3

 

 

 

 

 

 

●第 2 部でモルモットの種類から疾患、症例までを解説する田向先生。

 

 

2023.10tokushu3

 

 

 

 

 

 

●熱心に質問する受講生の先生。

 

 

2023.10tokushu3

 

 

 

 

 

 

●講義の終了にあたってあいさつするのは宮下めぐみ理事。

 

 

2023.10tokushu3

 

 

 

 

 

 

●学校飼育動物獣医師養成講座を運営するご担当の先生方およびスタッフのみなさま。

 

なお、11 月 5 日(日)14:30〜16:30に第 2 回の開催が予定されている。第 1 部は「小学校動物教育推進事業の根拠、目的及び期待する効果」を上野和広先生が、第 2 部では「チャボについて」を鳥と小動物の病院リトルバード院長の小島篤史先生がそれぞれ講演する。

 

2023.10furakutaru.jpg

 

 


広報委員会

小川篤志(広報委員長)

山本剛和(副委員長)

赤瀬 悟

安藤淳代

伊藤優真