Interviewee:藏内勇夫 日本獣医師会 会長/世界獣医師会 次期会長
Interviewee:上野弘道 東京都獣医師会 会長
Interviewer:小川篤志 東京都獣医師会 理事・伊藤優真 東京都獣医師会 広報委員長
Editor:TOJU広報委員撮影協力(長田 慶)
世界の獣医師が一堂に会する世界獣医師会大会が、31年ぶりに日本で開催されます。テーマは「ワンヘルスで世界の獣医療が示す未来」。日々の診療ではなかなか身近に感じる機会が少ない「ワンヘルス」という言葉。
実は、人・動物・環境が深く関わり合う現代において、獣医師が果たすべき役割を再確認し、視野を広げるうえで欠かすことのできないキーワードとなります。今大会では、世界各国から多様な分野の専門家が集結し、未来の地球のために獣医師ができることについて議論が交わされます。
今回はそんな世界獣医会大会に向けて、大会の魅力や見どころ、大会を通じて見えてくるワンヘルス(One Health)の未来、そして獣医師が担うべき使命について、キーパーソンの皆さまにお話を伺いました。
知っていますか?世界獣医師大会
世界獣医師会大会とは?
小川
今回、世界獣医師会大会が2026年4月に日本で開催されるということですが、この「世界獣医師会大会」とはいったいどのような大会なのでしょうか。我々が普段参加している学会とは違い、聞き慣れない名前ですので、色々とお話をお伺いできたらうれしいです。
藏内
世界獣医師会大会というのは、世界獣医師会(World Veterinary Association:WVA) による大会で、世界各国の獣医師や獣医学関係者が一堂に会する貴重な機会となっています。2026年の4月に開催される東京大会では「ワンへルスで世界の獣医療が示す未来」をテーマとし、人と動物の健康と環境の健全性を一つと考えるワンへルス(One Health)に着目して、多岐にわたる分野の発表が行われる予定です。
上野
以前日本で開催されたのが1995年の横浜大会ですから、実に31年ぶり、2度目の開催ということになりますね。
伊藤
久しぶりの日本での開催なのですね。臨床分野中心の内容なのでしょうか。
藏内
小動物臨床に限らず、大動物や公衆衛生、野生動物、動物福祉など、さまざまな分野について触れることができる大会になります。
伊藤
普段は臨床に携わっている先生にとっては、臨床以外の獣医師の役割を知るよい機会になりそうです。
小川
世界獣医師会大会が東京で開催されるということで、日本の獣医師にとっては大変誇らしいことですね。そして、藏内会長がこの世界獣医師会の会長になられるとお伺いしましたが、こちらもさらに喜ばしいことだと思います。そこでお聞きしたいのですが、世界から日本に期待されていること、あるいは藏内会長ご自身が感じている皆さんへの期待は、どのような点にあるとお考えでしょうか。
藏内
それはやはり、一番はワンヘルスだと思いますね。ワンヘルスとは、人と動物の健康と環境の健全性を一体的に守るための概念です。世界の研究者や医師会・獣医師会の間では、「なぜ日本はワンヘルスにこれほど取り組めるのか」という関心が高いのです。
小川
ワンヘルスについては東獣ジャーナルでも過去に特集したこともあります(※2023年1月号vol.606、東京都獣医師会HPで閲覧可能)。
藏内
ワンヘルスに関しては、2004年に感染症予防や生物多様性に関する「マンハッタン原則」が提言されたものの、近年まで具体的な取り組みや大きな進歩がありませんでした。しかし、2016年に日本で国際会議が開催され、ここで初めて世界医師会と世界獣医師会、そして日本医師会と日本獣医師会の4団体が共同で、ワンヘルスの具体的な4項目をまとめた「福岡宣言」を採択しました。
小川
そのような流れだったのですね。
藏内
この「福岡宣言」は、人と動物の感染症対策、抗菌薬の適正使用、医学・獣医学におけるワンヘルス教育の強化、そして両者の連携による社会課題への共同対応などについてまとめられ、ワンヘルス推進に向けた連携の一歩となりました。
伊藤
ワンヘルスの具体的な取り組みは、日本から動き出したのですね。
藏内
なぜ日本はワンヘルスをここまで具体的に進めてくることができたのか、なぜ政治がこれほど関わり、行政が出資し、教育の中でも積極的な話し合いが進むのかーそういった点に世界が注目しています。
東京都獣医師会としての影響力
小川
世界獣医師会から期待されていることとして、日本獣医師会、そして藏内会長に対して、ワンヘルスという一つのキーワードをさらにリードしてもらいたいという思いがあったのですね。 その流れで上野先生にお伺いしたいのですが、東京都獣医師会としても役割があるわけですよね。ところが、人獣共通感染症や環境問題というものに対して、やや距離を感じられる方も中にはいらっしゃると思うのです。
上野
そのように感じている方の声を聞くこともありますね。
小川
他の地域のように自然に囲まれた環境でもなく、畜産が盛んでもないという中で、獣医師の皆さんを見ていると、どうしてもワンヘルスというものに対して距離を感じてしまうことがあります。そんな状況の中で、東京都獣医師会として影響力を発揮していきたいことは何でしょうか。
上野
まず、我々東京都獣医師会にとっても、人獣共通感染症と薬剤耐性菌(AMR)は欠かすことのできない重要なテーマだと思います。また、福岡県が推進しているワンヘルスの6つの柱の中に「人と動物の共生」というものがありますが、我々は小動物を診る先生が多い団体ですから、やはりペットを介したワンヘルスに取り組みたいという強い思いがあります。
小川
なるほど。ペットを介したワンヘルスですか。
上野
犬や猫をはじめとするペットとの暮らしは、人々の心を癒すだけでなく、健康面や高齢者の介護問題などでも多くのメリットがあることがわかっています。そういったメリットをしっかりと社会に伝えていくことによって「ペットと一緒に暮らすことで、私たちはこれだけ幸せになっている」ということを広くお伝えしていきたいです。 また、関東でも確認され始めた重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に代表されるような、人獣共通感染症も大切なテーマになりますね。“自然との関わり”という部分もきちんと認識しながら対策を取っていく必要があり、これもワンヘルスの一環だと感じています。東京都獣医師会では、特にこれらの部分を力強く進めていきたいなと思います。
藏内
ちょうどそこに貼ってある小笠原諸島の野生動物に関するポスターのメッセージにもありますね。『人とペットと野生動物が共に暮らせる』というのは、いま非常に大切なテーマになります。
小笠原諸島の野生動物に関するポスター
小川
先ほど上野先生がおっしゃったような、人と動物の共生、特に都心部における共生がテーマになってくると思いますが、そうした点については、藏内会長としても期待されるところでしょうか。
藏内
大切だと思いますね。人間が自然環境を理解して共生し、自然が少ない都心でも心豊かに生活ができるということは、ワンヘルスにおける健康づくりの第一歩です。獣医師というのは、動物の健康を守ることで人間の健康を支えているのです。そういった意味では、特に東京都獣医師会が果たす役割は大きいと思いますよ。
五輪種目にもなった、あのパフォーマンス
小川
では、切り口を変えてお伺いします。今回、世界獣医師会大会が東京国際フォーラムで開催されますが、参加者はどのように楽しめばよいのでしょうか。
藏内
今回のテーマにもある「ワンヘルス」ですが、なかなかわかりにくい概念ですよね。実際、まだよく理解できていない先生方もいらっしゃるかと思います。そうした先生方、さらには学生や一般の方にも「なるほど!」と思っていただけるようなコンテンツをご用意したいと考えています。
伊藤
獣医師にとどまらず、さまざまな人にワンヘルスについて知っていただくということですね。
藏内
そうですね。やはり多くの人に関心をもっていただかなくてはなりません。獣医師以外にも、学生や一般の方、さらには子供まで来てくれるような大会にしたいです。例えばですが、ブレイキンというスポーツをご存知ですか? 実は、今回の大会でそのパフォーマンスを披露していただけることが決まりました。
小川
本当ですか?それはおもしろそうですね!
藏内
学会だと専門家しか集まらないのでね、より多くの方に足を運んで楽しんでもらえたらうれしいです。ブレイキンは2024年からオリンピックの種目にも追加されたダンススポーツで、音楽に合わせて身体をアクロバティックに動かしたり、ダイナミックなパフォーマンスをして競い合うスポーツです。
伊藤
それは若い方も楽しめそうですね!実際にダンスしているところを見てみたいです。
”日本文化を楽しむ”を楽しむ
伊藤
藏内会長が考える大会の魅力は、どのようなところにあるのでしょうか。
藏内
大きく分けて2つあると思いますね。獣医師は高度専門技術者の集団ですから、世界の専門家たちと獣医療について交流できる、世界の研究発表が聴けるという点は、もちろん魅力的なところだと思います。
伊藤
国際大会の醍醐味の一つですね。
藏内
また、分野を超えた魅力もあります。例えば医師と獣医師のワンヘルスに関する共同のシンポジウムなどでは、普段交流機会の少ない医師や他の分野の専門家たちと情報交換ができる大変有意義な機会となるでしょう。
上野
世界最先端の獣医療の技術もそこで展開されますね。獣医療現場で活躍するロボットだとか、さまざまな機械や技術が展示されると思いますので、そういう未来につながる技術に触れるのも刺激になるでしょう。
藏内
もう一つは、万博のようにワクワクする楽しい雰囲気ですね。
上野
僕はウェルカムパーティの楽しい雰囲気ばかり考えていました(笑)。
藏内
昨年7月に米国のワシントンD.C.で開催された世界獣医師会大会では、閉会式に小池都知事にもご出席いただきました。 小池都知事が「次の日本大会では美味しいお寿司を提供します」とおっしゃると、会場が「ワー!」と盛り上がりました。世界の参加者は和食に非常に関心があるようです。
小川
僕もさまざまな国に行きましたが、やっぱり楽しいのは海外の先生方との交流です。 別に獣医療の話なんかしなくても「寿司好き?」「ワォ、いいね!」みたいな会話とか、もうそれだけでも楽しかったりするんですよね。そういった海外の方との交流や、同じ獣医師という資格をもった人同士のつながりがうれしいです。
伊藤
今回、海外から1,000人ほどの参加者が集まるという見込みですが、どのような国からの参加者が多そうですか?
藏内
特にアジアやアメリカからが多いと思います。海外から来た方々が楽しんでいただけるような企画や取り組みもご用意しています。
忍者姿の上野先生:2019 年 FASAVA 東京大会開催の誘致 PR イベント(2018 年 シンガポール)にて。
藏内先生とビル・ゲイツ氏
上野
日本文化を楽しんでいらっしゃる海外の方を見るのも楽しいですよね。FASAVA(Federation of Asian Small Animal Veterinary Associations)の東京大会開催の誘致PRをシンガポールで行った際、私は忍者の衣装を着て会場にいたのですが、海外の先生方から大変人気で……! 次から次へと写真を求められました。人生最大のモテ期でした(笑)。
藏内
臨床の先生方は忙しく、入院患者もいますから、なかなか海外を回るのも難しいですよね。ですので、今回は世界に触れる絶好の機会だと思って、ぜひ参加していただけるとうれしいです。
ビル・ゲイツ氏、来日 !?
伊藤
他にワクワクするような内容は何かありますか?
藏内
実は私、ビル・ゲイツ氏に「ぜひこの大会に来ていただきたい」と頼んでみました。
小川
本当ですか!! お会いされたのですか?
藏内
ビル・ゲイツさんは、2000年にビル&メリンダ・ゲイツ財団を設立し、アフリカにおける風土病の研究やワクチン開発を通して公衆衛生の向上に取り組んでこられました。
伊藤
フィラリア症やマラリアなどの研究にも貢献されていましたね。本当に素晴らしいことです。
藏内
私は福岡で毎年ワンヘルスの国際フォーラムを開催しており、将来的にはダボス会議のような国際的な場に発展させたいと考えているのですが、そのためには世界トップクラスの研究者に来ていただく必要があります。 そこで、ビル&メリンダ・ゲイツ財団に第一線で活躍されている研究者の派遣をお願いしたところ、なんと本当に派遣してくださったのです!このお礼を直接お伝えしたいと思いご連絡したところ、実際にお会いできることになったのです。
伊藤
ええ……! それは本当にすごいことですね。
藏内
直接お会いした際には「ご協力いただき、本当にありがとうございます」とお礼を言いました。また、「私はワンヘルスという分野に尽力していますし、お互いの取り組みには共通点も多いので、今後とも協力し合えればうれしいです」とお伝えしたところ「頑張りましょう」と言ってくれましてね。
上野
それはうれしいことですね。
藏内
そこで「実は次回、日本で獣医師の世界大会を開催するので、お越しいただければ大変ありがたいです」とお願いしてみたのです。
小川
すごいですね。 誰もが知っている方がもしかしたら来られるかもしれないというワクワクがありますし、学術とはまた違った楽しみ方も広がりそうです。
もっと知りたいOne Health
ワンヘルスのはじまり
小川
さて、ここまで大会の内容や楽しみ方について伺ってきましたが、たびたび登場するキーワード「ワンヘルス」について、もう少し掘り下げてお話を伺いたいと思います。このワンヘルスという言葉について詳しく説明していただけますか。
藏内
ワンヘルスとは、人と動物の健康と環境の健全性は相互に深く関係しているという考え方のことで、これらの健康を持続的に最適化するための総合的なアプローチのことを指します。さまざまな分野の垣根を越えてアプローチすることが大切で、今回の大会の中核となるキーワードです。
上野
ドイツのウィルヒョウ博士の頃には、すでにワンヘルスと似たような概念はありましたよね。
藏内
その当時、人と動物が共通して感染する病気が発見され、彼は1855年に初めて人獣共通感染症(Zoonosis)を提唱しました。その後、国際的な公衆衛生の枠組みとして「ワンワールド・ワンヘルス」という概念が提唱され、現在のワンヘルスにつながる考え方が体系化されていきました。
小川
では「ワンヘルス」は世界のどこにいても共通のキーワードになるのですね。
藏内
そうなのですが、まだ限られた専門家や獣医師の間で知られている程度だと思います。人獣共通感染症などで関わる機会が多いため、獣医師の間では比較的認知されているほうだと思いますね。
小川
ワンヘルスはこの東獣ジャーナルでもたびたび出てくるキーワードなのですが、もっと積極的に取り上げていくべきだと思います。
幼稚園児でもわかるワンヘルス
藏内
実は先日、幼稚園でワンヘルスについてお話しする機会をいただいたのです。ところが行ってみたら驚きましてね。てっきり保護者の方に向けた講演だと思っていたら、対象はなんと幼稚園児だったのです。
伊藤
え! 保護者の方はいなかったのですか?
藏内
はい、子どもたちだけでした。「これはどう話したものか……」と悩んでいたら、先生が「会長、まずは子供たちの心を掴んでください」とおっしゃるんです。どうやって掴むんか……と思いましたね。 でも、みんな素直な子供たちでした。「良い子のみなさん、こんにちは!」と声をかけたら「はーい!」と元気に返してくれました。ちょうど夏場でしたからね、こんな感じに話してみました。
一同
なるほど~!
藏内
園児たちも「へぇ~」と反応してくれました。そして、こう続けたんです。
藏内
そうすると、またみんな「はーい!」と答えてくれたんですね。
上野
いやぁ、すごい。まさに幼稚園児でもわかるワンヘルスですね。素晴らしいです!
藏内
今回は幼稚園でしたが、こうした内容を行政向けに調整して、時には総理大臣や官房長官がおられる官邸でお話しすることもあるんですよ。
上野
子どもから総理大臣まで……幅広いですね(驚)。
宇宙とワンヘルス
伊藤
獣医師である我々も、もっとワンヘルスを身近に感じられるようになるとよいですね。
藏内
ワンヘルスは人獣共通感染症などに光が当たりがちですが、もっと視野を広げてもらって、「地球の健康を守る」という大きな使命が獣医師にはあることに気が付いてほしいですね。地球の健康を守り、地球で暮らす人や動物、さまざまな生き物を守ることができるのが獣医師です。地球の健康を守るという視点は、宇宙から地球を見るとより理解しやすいのです。
小川
宇宙からですか!?
藏内
そうです。私は宇宙飛行士の毛利さんのご講演を拝聴したことがあるのですが、本当に素晴らしいお話をされる方でした。
伊藤
そうなのですね。宇宙から地球を眺めた方が語るメッセージには、ワンヘルスを考える上でのヒントがたくさんありそうです。
藏内
毛利さんのお話で今でも覚えているのは、「自分たち宇宙飛行士は、地球を脱出しようと思って宇宙飛行士になったのではないのです。地球という素晴らしい星をどうしたら守ることができるのか、そのために宇宙へ向かったのです」とおっしゃっていたことです。 そして、宇宙から見た地球の昼と夜の画像を見せながら「皆さん、夜になるとこれほど人工的な光が見えるでしょう。ここが環境が壊されているところなんです。」と教えてくれましたね。
上野
ワンヘルスって、各論から入るとコアの部分がよく見えなくなってしまうのですが、僕らは成層圏を超えていなかったんですね(笑)。 視野を広げて「地球を守る」と考えると、そこからわかってくるものがありそうです。
獣医師はワンヘルスの主役の一人
藏内
気象変動と環境破壊は大きく関係しています。地球上で人間がこれからも生活していこうと思うならば、ワンヘルスという考え方を身につけて、自分たちがどのような生活をするべきかを考えなければなりません。
小川
そんなワンヘルスという世界を動かすキーワードを、日本が主導して、藏内会長が中心となって掲げてくださっているわけですね。さらには、そのワンヘルスの主役の一人に獣医師がいるというのは、大きな誇りですね。 今回の世界獣医師会大会の中で、獣医師たちがその誇りをもてるかどうかって、結構重要な気がします。これはロジカルな話ではなく、もっとエモーショナルな話で重要だと思うのです。
上野
私が東京都獣医師会の会長になった時に、“獣医師 4.0”という言葉を使い始めました。4.0とは、簡単に言えば“第4の時代”という意味で、最初の1.0は軍馬に携わった獣医師の時代です。その後、対象が軍馬(1.0)から産業動物(2.0)、伴侶動物(3.0)に変わっていくなかで、これからはさらにフィールドを広げ、社会で活躍する立場になってくると私は考えています。 これはまさにワンヘルスの考え方だなと、今日のお話を聞いて改めて思いましたね。地球の健康を守るのは、まさに我々の仕事なのだということを強く感じました。
藏内
私は臨床現場にはいませんが、臨床でしかできないことってたくさんありますよね。立場や立ち位置は関係なく、それぞれの形でアプローチすればよいと思います。
上野
藏内会長の立場だからこそできることも、本当に数え切れないほどあると思います。
藏内
そうかもしれないですね。大学卒業後は福岡に戻りましたが、獣医師として自然環境や野生動物を守るのが私の使命だと考え、まずはアジアの環境破壊に対する「ラブ・グリーン」という植林活動を始めました。
伊藤
それがワンヘルス活動の始まりですね。
藏内
その後も、九州の野生動物であるツシマヤマネコの保護活動を進めたり、日本での外来生物に対する法律に関わったりなど、今思えば、地球環境を守る取り組みを知らず知らずのうちに続けてきましたね。
小川
継続する力がすごいですよね。地続きで続けてこられた活動が、今では世界へと広がり、こうしてしっかりと形になっているのが本当に素晴らしいです。
上野
やっぱり我々のリーダーってかっこいいですね!見ている世界が全然違うんだなと感銘を受けました。
伊藤
今日お話を伺い、世界獣医師会大会の解像度が一気に上がりました。僕は臨床に出て9年目になりますが、20代や30代の獣医師に、世界獣医師会大会に向けたメッセージがあれば、ぜひお聞かせください。
藏内
世界に目を向けて、羽ばたいてほしいということですかね。自分は臨床をやっているから世界はちょっと縁遠いとか、あまり関係がないというのではなく、私たちが日々向き合っている命は、地球につながっているんだということを感じてもらいたいです。
伊藤
獣医師、特に臨床の先生は動物病院にいる時間がとても多く、“医”の中の蛙になってしまうことがあると思っています。忙しいなかでも、もっと視野を広げていくと、問題解決の糸口が見つかったり、大きなやりがいを感じることができると思いました。
藏内
獣医師という専門家としてのモチベーションが一気に上がると思いますよ。まずは世界に目を向けて、その専門職としての役割を果たしてもらいたい。そうすることによって、獣医師として、モチベーションの高い充実した人生を送れるのではないかと思います。実際そう思って仕事をしていると、心が豊かになりますよね。
伊藤
同僚や友人も一緒に誘って、みんなで行ったほうが楽しいでしょうね。ワンヘルスについてお互い語り合ってもいいし、ちょっと勇気を出して海外の先生方と交流してみるのも、素敵な思い出になると思います。
藏内
ぜひ大会に参加いただき、ワンヘルスの講演を聴いていただきたいですね。そうすると、自分はこういった形でワンヘルスにアプローチしてみようという、何かヒントが得られると思います。
伊藤
ワンヘルスがわからない人ほど、大会に参加した方がよいですね。もっと身近に感じることができたり、日々の診察に向き合う気持ちも変わると思います。
上野
それぞれの専門性や立場の中で、この地球を守っていくのだと思って活動すれば、その積み重ねが、全体としてのワンヘルス活動につながるということですね。そのワンヘルスに関わっていけることに誇りをもち、「獣医師でよかった」と思える、そんな感覚になってもらえたら素敵です。
小川
ありがとうございます。ワンヘルスって、プロジェクトに近い印象をもっていたのですが、もっと概念的で普遍的なもので、この数年間だけで唱えるというものではない……。 もっと壮大な、地球を守るミッションのようなものなのですね。本日は大変有意義なお話をありがとうございました。
インタビュイーのご紹介
藏内勇夫
◼︎ 略歴・プロフィール
1979年3月 日本大学農獣医学部獣医学科 卒業
1987年4月 福岡県議会議員初当選(以後10期連続当選)
1993年7月 九州国立博物館誘致対策調査特別委員会 委員長
2001年5月 福岡県議会 議長
2003年6月 日本動物保護管理協会 会長
2006年6月 中央畜産会 常務理事
2010年3月 九州大学 大学院生物資源環境科学府 動物資源科学専攻 博士課程修了 博士(農学)取得
2013年6月 日本獣医師会 会長
2014年3月 日本獣医生命科学大学 名誉 獣医学博士 受理
2022年11月 アジア獣医師会連合(FAVA)会長(2024年10月まで)
2024年4月 世界獣医師会 次期会長(2026年4月から会長)
2025年4月 福岡県議会 議長(2回目)
2025年6月 全国都道府県議長会 会長
◼︎ 主な役職(現在)
全国都道府県議長会 会長
公益社団法人日本獣医師会 会長
世界獣医師会(WVA)次期会長
アジア獣医師会連合(FAVA)顧問
GEA地球環境行動会議 顧問
公益社団法人中央畜産会 常務理事
自由民主党福岡県支部連合会 常務相談役
九州の自立を考える会 会長
福岡県議会 議長
福岡県議会警察常任委員会 委員
福岡県議会ワンヘルス特別委員会 委員
福岡県馬術連盟 会長
公益社団法人福岡県獣医師会 名誉会長
公益社団法人福岡県畜産協会 会長
公益社団法人日本空手協会福岡県本部
◼︎ 顧問
上野弘道
◼︎ 略歴・プロフィール
1998年 日本大学卒業、獣医師国家試験合格
2016年 名古屋商科大学 大学院 経営学修士(MBA)修了/公社)日本動物病院協会 外科認定医 取得
2022年 日本獣医生命科学大学 大学院博士課程修了・博士(獣医学)取得
◼︎ 主な役職(現在)
公益社団法人 東京都獣医師会(TVMA)会長
公益社団法人 日本獣医師会(JVMA)理事
公益社団法人 日本動物病院協会(JAHA)副会長
一般社団法人 日本小動物整形外科協会(VOA japan)副代表理事
日本動物医療センターグループ 代表
帝京科学大学 非常勤講師