ツツガムシ病(Tsutsugamushi disease)

感染症法:四類感染症

概要

ツツガムシとはダニの名称である.ダニの刺咬によって死亡した患者からリケッチアが分離され,媒介したダニの和名が,そのままリケッチアの菌名や疾患名としてつけられた.そのために,名称によって混乱をまねくことがある.

疫学

アカツツガム,タデツツガムシ,トサツツガムシ,フトゲツツガムシによって媒介され,これらの幼虫期のダニに吸着される哺乳類は,全て感染動物となりうる.人は感染ダニに刺咬されると,その刺し口よりリケッチアが侵入し,ツツガムシ病を発症する.病原体は感染ダニのみによって維持される一方,感染動物はレゼルボアとはならないため本疾患は厳密には人獣共通感染症には該当しない.アウトドアスポーツの山歩き,キャンプ,川遊びや釣り,また,林業や農作業中に感染の機会が多い.地理的には北海道の一部地域を除いて発生が報告されている.月別の発生状況として日本全国で集計した場合には,3~5月の春および11~12月の秋から初冬にピークがみられる.発生時期は,ツツガムシ種幼虫の生息地域における活動時期によって地域ごとに異なる.韓国やカンボジアなどからの輸入感染症例も報告されている.我が国では年間300~500例の届出がある.

感染経路

感染卵感染幼ダニ吸血人や動物が感染感染若ダニ感染成ダニ感染卵を産卵 ↓↑ 非感染ダニが組織液を摂取(感染ダニにはならない)

保菌動物

ダニ.

病原体

Orientia tsutsugamushi というリケッチアである.大きさ 0.5×2.5μm の短桿菌で,偏性細胞内寄生性である.バイオハザードによるバイオセーフティーレベルは BSL3 であり,普通の施設では取り扱いできない.

動物における本病の特徴

症状

げっ歯類の感染は不顕性とされているが,強毒株の実験室内感染により致命的となった報告がある.犬での本菌の感染等に関する文献はない.

潜伏期

動物の潜伏期は不明である.

診断と治療

感染動物の診断と治療に関する報告はない.

予防

ツツガムシとの接触を避ける.

法律

感染症法の四類感染症に定められているが,動物における届出義務はない.

人における本病の特徴

人の疾患では,ダニに刺咬された痕の確認が重要であり,この徴候の見逃しにより誤診してしまうケースがある.

症状

流行地への旅行の有無を聞き取る.ダニの独特な刺し口(直径1 cm程度で,黒色痂皮とその周辺部の発赤を認める),発熱,発疹,リンパ節の腫脹などがみられる.治療が遅れるとDICや多臓器不全によって死亡することがある.

診断と治療

ELISA 法や蛍光抗体法の血清学的検査によって確定診断を行う.遺伝子による診断は早期発見につながる.治療には,第一選択薬としてテトラサイクリン系抗菌剤を用いる.クロラムフェノコール,アジスロマイシン,リファンピシンも有効である.ベータラクタム系およびアミノグリコシド系抗菌薬は無効である.

検査材料

血液,血清,痂皮を用いる.

予防

汚染地域では,肌を露出せずツツガムシによる吸着機会を避けるとともにダニ忌避剤などを適時使用する.山野からの帰宅時には入浴してダニを洗い流すことも有効である.

法律

感染症法の四類感染症に定められている.診断した医師は直ちに最寄りの保健所への届出が義務付けられている.

(2025年3月更新)

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