ツツガムシ病(Tsutsugamushi disease)

感染症法:四類感染症

概要

ツツガムシとはダニの名称である.ダニに刺咬され,死亡するケースがあり,その検体からリケッチアが分離され,媒介したダニの和名が,そのままリケッチアの菌名を疾患名としてつけられた.そのために,名称によって混乱をまねくことがある.

疫学

アカツツガム,タデツツガムシ,トサツツガムシ,フトゲツツガムシによって媒介され,ダニに吸血される哺乳類は,全て感染動物となりうる.人は感染ダニに刺咬されると,その刺し口よりリケッチアが侵入し,ツツガムシ病を発症する.動物では症状が現れにくい.また,病原体は感染ダニのみによって維持される.そのため,ダニのライフサイクルができるためには,吸血対象となるげっ歯類等の小動物の存在は不可欠である.アウトドアスポーツの山歩き,キャンプ,川遊びや釣り,また,林業や農作業中にダニに刺咬されるケースが多い.

感染経路

図

保菌動物

ダニ.

病原体

Orientia tsutsugamushi というリケッチアである.大きさは 0.5×2.5μm の短桿菌.リケッチアは細胞内寄生性である.バイオハザードによるバイオセーフティーレベルは BSL3 であり,普通の施設では取り扱いできない.そのため,獣医領域では,感染ダニの取り扱いが問題になる.ダニをうかつにつぶすと,外部にリケッチアをばらまくことになり,エアロゾールや傷口からの感染の危険性が示唆されており,感染拡大につながると言われている.感染力は非常に強く 10 個以下の菌数で感染が成立する.

動物における本病の特徴

症状

げっ歯類は症状が出ない.犬での本菌の感染等に関する文献はない.

潜伏期

動物の潜伏期は不明であるが,1~2 週間くらいと思われる.

診断と治療

血液塗抹標本を作り,マキャベロ染色をして,白血球内のリケッチアの検出.人工培地での培養はできない.細胞を用いた培養は可能で診断につながる.ELISA 法や蛍光抗体法の血清診断ができる.遺伝子による診断は早期発見につながる.治療には,テトラサイクリン,ミノサイクリン,クロラムフェニコールを投与する.ただし,細胞内のリケッチアには薬剤が届かないために,再発する可能性はある.

類症鑑別

他のリケッチア属やクラミドフィラ属との類症鑑別が必要である.

予防

ツツガムシとの接触を避けることが最大の予防法である.

法律

感染症法の四類感染症に定められているが,動物における届出義務はない.

人における本病の特徴

人のツツガムシ病は,ダニの存在を確認することが必要であり,ダニに刺咬された痕を見逃すと,誤診してしまうケースがある.

症状

流行地への旅行の有無を聞き取る.ダニの独特な刺し口の有無(2重のリング),発熱,発疹,リンパ節の腫脹がある.治療が遅れると死亡することがある.

診断と治療

血液塗抹標本を作り,マキャベロ染色をして,白血球内のリケッチアの検出.人工培地での培養はできない.細胞を用いた培養は可能で診断につながる.ELISA 法や蛍光抗体法の血清診断ができる.遺伝子による診断は早期発見につながる.治療には,テトラサイクリン系抗菌剤,クロラムフェノコールの投与.

検査材料

血液.

予防

流行地の作業では,肌を露出せずツツガムシの吸血する機会を避けるとともにダニ忌避剤などを適時使用する.山野からの帰宅時には,衣服のダニの付着注意し,家の中に持ち込まない. 皮膚に付着したダニを取り除くには,ダニの口部が皮膚に深く刺咬しているため,取り残しがないよう注意する.猟後の犬などの皮膚のダニの刺咬の有無を確認する.

法律

感染症法の四類感染症に定められている.診断した医師は直ちに最寄りの保健所への届出が義務付けられている.

(渡辺 隆之)

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