サルモネラ症 (Salmonellosis)

感染症法:三類感染症 家伝法:家畜伝染病(家きんサルモネラ感染症(ひな白痢,鶏チフス), 届出伝染病(S. Dublin, Enteritidis, Typhimurium, Choleraesuis)

概要

サルモネラは自然界に広く分布し,動物も本菌を保有していることから,これらの保菌動物が感染源となって人や動物がサルモネラ症を起こす.

疫学

サルモネラが発見されたのは1880年に腸チフスの患者からであった.その後サルモネラは食品,動物,環境などからも分離され,人や動物の感染源となっている.全国レベルで発生した食品に由来するサルモネラ症として,1980年後半から急激に増加した鶏由来のSalmonella Enteritidis を原因とした食中毒事例.1998年に発生した青森のイカ菓子による事例などがある.動物におけるサルモネラは亀,ヘビ,イグアナなどの爬虫類の保菌が50~90%と高く,畜産動物では鶏,豚,環境汚染動物ではネズミなどの保菌率が高い.

感染経路

保菌動物

哺乳動物,鳥類,爬虫類,両生類,環境に生息する各種生物も本菌を保有している.

病原体

サルモネラ属は2菌種(S. entericaS. bongori),6亜種(entericasalamaearizonaediarizonaehoutenaeindica)に分類されている.人および家畜,家禽の症例から分離される亜種はentericaarizonaeである.亜種 entericaに属する血清型の菌には,すべて固有名詞が付けられている(例えばS. Enteritidis).この血清型はサルモネラ全体で2,500種類以上ある.

動物における本病の特徴

症状

成獣では一般に症状が軽く,症状を示さないものが多い.発症すると下痢,発熱,削痩,敗血症,流産,関節炎などの症状が認められる.

潜伏期

動物種,血清型,感染菌量によって違うが,一般的に3〜7日間.

診断と治療

急性胃腸炎症状および発熱があり,嘔吐物,下痢便から培養により菌を分離する.治療は対症療法を行う.抗生物質の投与は,回復後の排菌を長期化させる原因となるので,投与する時は,患畜の衰弱状態,年齢等を考えて慎重に行う.

検査法と材料

検査はサルモネラの分離培養,材料は嘔吐物,下痢便を密封容器に入れて4℃で速やかに検査所に送る.

類症鑑別

コレラ症,毒素原性大腸菌症,カンピロバクター症,エルシニア症,赤痢.

予防

餌,水の管理,ネズミの駆除,定期検査による保菌の確認,家畜ではワクチンにより,一部の血清型菌の予防ができる.

法律

家畜伝染病予防法の家畜伝染病として家きんサルモネラ感染症(S. Pullorum及びGallinarum)が指定されている.また,届出伝染病としてS. Choleraesuis,S. Enteritidis, S. Dublin, S. Typhimuriumの4血清型菌は届出が義務づけられている.対象動物は牛,水牛,鹿,豚,いのしし,鶏,あひる,うずら,七面鳥である.診断した獣医師は直ちに最寄りの家畜保健衛生所へ届出る.

人における本病の特徴

サルモネラの中でもS. Typhi(チフス菌)とS. Paratyphi A(パラチフス菌)によって起きる腸チフス,パラチフスは「感染症法」において三類感染症として取り扱われている重要な感染症である.本菌は感染力が強く,患者は重篤な経過をとることが多いので,早期に適切な抗生物質の投与と治療が必要である.サルモネラ症の原因菌は他に約1,400の血清型菌あり,その血清型の中でもS. EnteritidisやS. Typhimuriumは,感染すると死亡率も高くなることから,重要な血清型とされている.サルモネラ症の発生時に菌の血清型を確認することは,治療を行う上で重要である.

臨床症状

サルモネラ症の主な症状は,嘔吐,下痢,腹痛,悪寒,発熱,頭痛などである.病原性の強いチフス菌やパラチフス菌による感染症では,高熱,敗血症など重篤な経過をとり,回復後も長期間保菌者となることがある.

潜伏期

中毒の原因菌では4〜48時間(多くは12時間).

予防

動物をさわった後は石けんで手を良く洗う.食品,水は十分加熱する.

法律

感染症法の三類感染症に定められている.S. Typhi及びS. Paratyphi Aの患者,疑似症患者及び無症状病原体保有者(キャリア)を診断した医師は,直ちに最寄りの保健所に届ける.その他のサルモネラは,五類感染症(感染性胃腸炎)として定点把握疾患に定められて,小児科定点医療機関より毎週報告されている.また,食品衛生法では本菌による食中毒が疑われる場合は,24時間以内に最寄りの保健所に届け出る.

(飯田 孝)

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