Q熱(Query fever, Coxiellosis)

感染症法:四類感染症

概要

 Coxiellla burnetii感染により人は,急性では発熱,関節痛等のインフルエンザ様症状,肺炎,肝炎等を示す.慢性では,肝炎,心内膜炎等を呈する.

疫学

わが国では1988年にカナダから帰国した留学生の発症例が報告されて以来,人をはじめ家畜,愛玩動物等に広く存在することが明らかとなった.不定愁訴を示す患者,慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome;CFS)の約20%が抗体保有者であり, PCR陽性者も認められている.また,市中肺炎の4.2%にQ熱患者が存在することから,患者は相当数いると推定されている.この様なQ熱患者の共通点は動物との接触が深く関わっている.

わが国におけるQ熱発生状況

年度 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
届出患者数 12 24 42 47 9 7 8 2 7 3 2 2
年度 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
届出患者数 1 1 6 1 0 0 0 3 2 0 1

感染経路

動物の糞便,尿,羊水,生乳,乳製品等からの経口,経気道の感染.

保菌動物

野性動物,家畜,愛玩動物,鳥類など各種動物が感染し,保菌動物となる.

病原体

 Coxiella burnetiiは,近年,リケッチアからレジオネラ目コクシエラ科コクシエラ属に分類された一属一種の小桿菌状で多形性を示す大きさ約0.2〜0.4×1.0μmの菌である.

動物における本病の特徴

症状

一般に軽い発熱,鼻汁程度で多くは不顕性に終わる.妊娠動物では流死産を起こすこともある.

潜伏期

感染実験では3〜7日程度である.

診断と治療

蛍光抗体法による血清抗体価測定,PCR法による遺伝子の検出.治療にはテトラサイクリン系抗生剤,ニューキノロン系抗菌剤が使用される.

検査法と材料

抗体価測定(蛍光抗体法)には血清を,PCR法による遺伝子検出には血清又は血液,臓器を凍結して送付する.

予防

ワクチンは無い.飼育環境の消毒.

法律

動物における届出義務はない.

人における本病の特徴

症状

急性型:2〜3週の潜伏期の後,急激な発熱,頭痛,胸痛,筋肉痛,関節痛,悪寒,食欲不振等のインフルエンザ様症状を呈する.その他に肺炎,肝炎,心内膜炎,髄膜炎,髄膜脳炎,腎臓障害等の多彩な病像が診られる.予後は一般に良好で,多くは数週間後には回復する.

慢性型:数ヶ月の潜伏期の後,心内膜炎,慢性肝炎,心筋炎,心外膜炎,壊死性気管支炎,QFS (post Q fever fatigue syndrome;慢性疲労症候群様症状を呈する)等が認められる.まれに血管炎,多発性関節炎,胎盤炎,流産等も起こす.重症の合併症では,死の転帰をとることもある.

診断と治療

動物との接触頻度が高い人は診察時に申告すると良い.一般に予後は良好で,2週間以内に回復する.治療には,テトラサイクリン系薬剤の投与.

類症鑑別

急性型ではインフルエンザ.慢性型では,CFS,うつ病,詐病等

検査施設

人の検査は保健所をとおして行政検査.

予防

出産時,特に死・流産をおこした動物の取り扱いは要注意である.流産胎盤などは焼却し,汚染された環境はクレゾール石けん液,5%過酸化水素水(金属製器具には不可)で消毒する.

法律

感染症法の四類感染症に定められている.診断した医師は直ちに最寄りの保健所への届出が義務付けられている.

(2025年3月更新)

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