ライム病(Lyme disease)

感染症法:四類感染症

概要

Ixodes属マダニを媒介節足動物とするスピロヘータの一種 Borrelia Sensu Lato(B. burgdorferi, B. garinii, B. afzerii, B. bavariensisを含む)の感染に起因する遊走性紅斑,リウマチ様関節炎をおこす細菌感染症である.

疫学

わが国におけるライム病発生状況

感染経路

ライム病ボレリアはマダニと野鼠,鳥類等の小動物間で維持伝播されている.わが国ではシュルツェマダニ,ヤマトマダニ等からボレリアが分離されている.寒冷地である北海道,長野県などに生息するシュルツェマダニは明らかなライム病ボレリア媒介種である.その他のマダニ類はボレリアを保有しても,媒介はしないとされている.これらのマダニは山野に生息し,人や野性動物を吸血する.成虫は7〜10日間吸血し続け約1cm前後の大きさになる.

保菌動物

わが国における保有動物は,B.gariniiではアオジ,アカハラ等の鳥類,B.afzeriiではアカネズミ,ヒメネズミ,ヤチネズミ等の野鼠である.しかはマダニ雌成虫の吸血源であり,保有動物とはならない.

病原体

Borrelia burgdorferi sensu latoは特有な螺旋構造のスピロヘータで,菌体の両端から派生する7〜15本の鞭毛を有す.ライム病関連ボレリアは,全世界で少なくとも11種あり,このうち,病原性が確認されているものはB. burgdorferiB. gariniiB. afzerii の3種のみである.日本では後2種が主な病原体となっている.

動物における本病の特徴

症状

家畜,犬では食欲不振,発熱,リンパ腺腫脹,多発性関節炎を伴う跛行を呈す.跛行は感染後2〜5ヵ月経過して発現する.

潜伏期

不明.

診断と治療

マダニ刺咬歴の確認,抗体価の測定,病原体の分離.治療には,アモキシシリン,ミノサイクリンが用いられる.

予防

マダニの生息地である野山に犬などを連れて行かないことが望まれる.どうしてもつれて行く場合には,ダニの防除剤の携帯・使用する.

法律

動物における届出義務はない.

人における本病の特徴

日本では1986年に長野県の症例が初報告されて以来,現在までに数百人の患者が,主に本州中部以北(特に北海道および長野県)で見い出されている.

症状

潜伏期

3〜4週間.

診断と治療

流行地でのマダニ咬傷確認と遊走性紅斑等が最も重要である.抗体価の測定.遊走性紅斑の治療にはドキシサイクリン,神経症状にはセフトリアキソンなどが使用される.

類症鑑別

確定診断は、国立感染症研究所細菌第1部、また、民間の検査会社に問い合わせするとよい。

予防

マダニが皮膚に付着しないような服装にする.マダニ咬傷のチェックを行う.

法律

感染症法の四類感染症に定められている.診断した医師は直ちに最寄りの保健所への届出が義務付けられている.                                 

(2024年3月更新)

このページのTOP