リステリア症(Listeriosis)

感染症法:五類感染症(細菌性髄膜炎)

概要

Listeria monocytogenes により人や動物が感染する疾患で,その致死率は人で約30%と高い. 

疫学

感染経路

反芻動物は,貯蔵環境の悪いサイレージにおいて干し草内に増殖したリステリアが原因で感染する場合が多い. 犬,猫等の動物の感染原因も主に汚染された餌の摂取によるものである.人は汚染食品の摂取により感染することがわかっている.

保菌動物

健康動物の糞便中から犬 0.9%,ネズミ 6.5%,牛 2.0%,豚 0.8%の割合で本菌が確認される.その他のほ乳類,鳥類,両生類,淡水魚,甲殻類,節足動物など多くの動物が本菌を保菌している.

病原体

リステリアは土壌,河川,海水中からも分離される.本菌は,5 菌種からなるが,人や動物に病原性があるのは L. monocytogenes 1菌種のみである.例外として,L. ivanovii によるマウスへの病原性, L. seeligeri によるめん羊の流産が知られている(表 1).リステリアは通性嫌気性グラム陽性無芽胞短桿菌で鞭毛を持ち,30℃前後で活発に運動する.本菌の至適発育温度は30〜37℃であるが,4℃〜45℃の広い温度域で増殖が可能である.L. monocytogenes の血清型は 13 種類の菌体抗原と4 種類の鞭毛抗原の組み合わせにより12 種類に分類されている(表2) . 人や動物から分離されるリステリアの血清型は,4b,1/2a,1/2b の3血清型が 90%以上を占めている.

動物における本病の特徴

症状

潜伏期は不明.脳髄膜炎(その初期症状は元気消沈,食欲減退,歩様不安定,数日で斜頚,回旋運動,起立不能,横臥,知覚麻痺,燕下困難,流涎,呼吸促迫,昏睡状態となり死亡する),その他敗血症,流産,咽喉頭麻痺,乳房炎等が見られる.牛,めん羊,山羊では脳炎型が多い.

診断

血液,髄液からリステリアの分離,または PCR 法により遺伝子を検出する

治療

治療にはペニシリン系,マクロライド系,アミノグリコシド系,テトラサイクリン系の抗生物質を投与する.

予防

飼料にする干し草は,リステリアが増殖しないように貯蔵環境を管理する.リステリア症の原因食品となっている乳製品,畜産加工品を愛玩動物に与える時は,新鮮なものを与えるか,加熱した後に与える.
また,リステリアは室温で良く増殖するため,餌を常温に長時間放置しない.給餌用の食器はこまめに洗浄して,リステリアの増殖を防ぐ.

法律

と畜場法ではリステリア症と診断された家畜のと殺および解体の禁止,解体後の検査でリステリアが確認された場合は全部廃棄となる.

人における本病の特徴

1981年カナダでキャベツサラダによる人の集団発生が起きるまでリステリア症は,医学領域ではあまり問題にされなかった.ところが本症が食品によって起きることが明らかにされてからは,WHO を中心に世界各国の発症例や食品に関する調査報告が数多く出されるようになった.わが国では毎年,約30例ほどの散発例が報告されているが,疫学的な背景が明らかにされたものはほとんどない.リステリア症の原因菌である L.monocytogenes は健康人の糞便から 1.2%分離されている.このことから,本菌に汚染された食品を摂取したことで,必ずしも感染が起きる訳ではないが,免疫能が不十分な子供や低下した高齢者,妊婦,免疫抑制剤を投与されている人などのハイリスクグループあるいは汚染菌量の多い食品を摂取した人では,感染の起きる可能性が高くなる.本症では治療が遅れると死に至る場合が多いので,早期診断・早期治療が必要である.リステリア症は高濃度にリステリアの汚染を受けた乳製品又は畜産食品から感染する場合が多い.愛玩動物である犬や猫からの発症例はほとんど報告されていないので,直接人への感染源にはならないと考えられる.

臨床症状

髄膜炎(その症状は悪寒,頭痛,背痛,倦怠感などのインフルエンザ様症状,その後高熱および中枢神経症状が認められる),その他脳炎,敗血症および急性腸炎等も診られる.

潜伏期

数日〜1ヶ月.

予防

冷蔵庫の中でも増殖できるので,定期的な清掃を行う.生の肉や魚を取り扱った後は石けんで手を洗う.ハイリスクグループは汚染の高い食品の摂食を避ける.

法律

感染症法の五類感染症(細菌性髄膜炎)に定められている.診断した医師は最寄りの保健所への届出が義務付けられている.食中毒が疑われる場合は,食品衛生法により24 時間以内に最寄りの保健所に届け出る.

(飯田 孝)

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