レプトスピラ症(Leptospirosis)

感染症法:四類感染症家伝法:届出伝染病(L. Pomona 等7血清型)

概要

病原性レプトスピラ(Leptospira interogansなど)により,発熱その他多彩な症状を示す急性熱性感染症である.

疫学

わが国のレプトスピラ症は,秋病(あきやみ),用水病,七日熱などの風土病として古くから知られている.死亡者は昭和56年(5人)まで減少し続けたが,その後現在に至るまで横ばいの傾向にある.男女比は,男性が女性に比べて約3倍高い(職業と関連あり).

感染経路

感染動物の腎臓内のレプトスピラ → 尿に排泄 → 河川,湿地,沼,湖などの地表水中に生存 → 動物や人が汚染水に触れることで,経皮的,経口的に感染する.

保菌動物

各種動物が感染して保菌動物となる.特に重要なのは感染後レプトスピラを生涯排泄し続けるげっ歯類,年単位で排泄する犬,月単位で排泄する豚,約1ヶ月間排泄する牛などである.

病原体

グレプトスピラはスピロヘータ目レプトスピラ科レプトスピラ属に属している.レプトスピラ属は病原性レプトスピラL.interogans sensu latoと非病原性レプトスピラL.biflexa sensu latoからなる.レプトスピラは全世界に分布する大きさ0.1μm×612μm のスピロヘータで12遺伝型,250ほどの血清型が知られている.

動物における本病の特徴

症状

動物種によって異なるが,一般に急性期では発熱,沈鬱,食欲不振,黄疸,慢性感染では腎炎などが認められるが,自然回復して保菌動物となる場合が多い.

潜伏期

動物種により異なる.

診断と治療

臨床症状,病原体の確認(尿の暗視野顕微鏡観察,培養,PCR法),血液生化学検査(血中尿素窒素の上昇),抗体価の上昇を確認,治療にはストレプトマイシンが著効,ゲンタマイシン,ペニシリンGも有効.

検査法と材料

治療前の血液および尿を表2に従って採取する.

予防

犬では年1回の混合ワクチンの投与と定期健康診断.

法律

家畜伝染病予防法の届出伝染病としてL. Pomona, L. Canicola, L. Icterohaemorrhagiae, L. Grippotyphosa, L. Hardjo,L. Autumnalis, L. Australisの7血清型菌は届出が義務づけられている.対象動物は牛,水牛,鹿,豚,いのしし,犬である.診断した獣医師は直ちに最寄りの家畜保健衛生所へ届出る.感染症法でも四類感染症に定められているが,動物における届出義務はない.

人における本病の特徴

症状

レプトスピラは水の中でも生存し,健康な皮膚から侵入する.本菌は血清型によって症状が異なり,重症例(ワイル病)では黄疸,出血,蛋白尿の3主徴が認められ,発熱その他多彩な症状を起こす.

ワイル病:潜伏期は3〜14日(多くは5〜7日).

前駆期:多くは突然発病する.全身倦怠感,頭痛,腹痛,食欲不振などを訴える.

1期(発熱期):発熱期間は5〜10日続き,1〜2病日の体温が最も高く38〜40℃結膜の充血,筋肉の圧痛などが認められる.

2期(発黄期):発熱が収まった後,第2病週に黄疸が増強し,3〜6週間持続する.また,皮膚の点状出血を始め吐血,血便,血尿,鼻出血などが見られる.

3期(回復期):第3病週の後半になると黄疸は極期を過ぎ,出血傾向もなくなって来る.一般的に人は,回復後長期間レプトスピラを排泄することはない.

診断と治療

血液(発熱期),髄液,尿からの病原体分離,ペア血清を用いた凝集反応による血清診断,PCR法による遺伝子検査.

治療には,ストレプトマイシン,ペニシリン,ドキシサイクリン,テトラサイクリン,クロラムフェニコールの投与.ワイル病では早期に適切な治療がされない場合,死亡率は20~30%である.

予防

ワクチンの接種.保菌動物の尿または汚染された水に直接ふれないようにする.保菌動物であるネズミの駆除.

法律

感染症法の四類感染症に定められている.診断した医師は直ちに最寄りの保健所への届出が義務付けられている.

(飯田 孝)

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