日本紅斑熱(Japanese spotted fever)

感染症法:四類感染症

概要

マダニによって媒介されるリケッチアよる発熱と発疹を主徴とする疾患である.1984 年にみつかった非常に新しい感染症である.

疫学

キチマダニ,フタトゲチマダニ,ヤマトダニといったマダニに刺咬されることにより伝播するダニ熱である.ダニに吸血される哺乳類は,全て,感染動物となりうる.げっ歯類や鹿からリケッチアが発見されている.牛や犬やその他の野生動物からも抗体価の高い動物が発見されており,感染の拡大が危惧されている.

感染経路

感染マダニ → 吸血 → 人や動物が感染.

保菌動物

ダニ,哺乳類.

病原体

Rickettsia japonica というリケッチアである.大きさは 0.3~0.5×0.8~2.0μm の短桿菌ないし双球菌にみえる.リケッチアは細胞内寄生性である.バイオハザードによる物理的封じ込めレベルは,P3 であり,普通の施設では取り扱いができない.

動物における本病の特徴

症状

動物では症状は不明とされている.しかし,キャリアーとなるので注意が必要である.感染者の犬が本症に感染していた例がある.

潜伏期

動物の潜伏期は不明である.

診断と治療

血液塗抹標本を作り,マキャベロ染色をして,白血球内のリケッチアを探す.人工培地での培養はできない.細胞を用いた培養は可能で,診断につながる.間接 ELISA 法や間接蛍光抗体法の血清診断ができる.遺伝子による診断ができる.治療には,ドキシテトラサイクリン,ミノサイクリン,ニューキノロン系抗生物質が有効である.

類症鑑別

他のリケッチア属やクラミドフィラ属との類症鑑別が必要である.

予防

マダニの駆除が予防につながる.

法律

感染症法の四類感染症に定められているが,動物における届出義務はない.

人における本病の特徴

日本紅斑熱症は,ツツガムシ病よりも症状はわかりづらいが,患者がマダニに刺されたことを伝えれば,誤診のケースは少なくなる.まず,ダニの存在を確認することが必要である.

症状

マダニの刺し口,発熱,発疹がある.ツツガムシ病の刺し口に類似した 2重のリングができる.ツツガムシ病と異なりリンパ節は腫れない.

診断と治療

血液塗抹標本を作り,マキャベロ染色をして,白血球内のリケッチアを探す.人工培地での培養はできない.細胞を用いた培養は可能で診断につながる.間接 ELISA 法や間接蛍光抗体法の血清診断ができる.遺伝子による診断は早期発見につながる.治療には,早期にテトラサイクリン系抗菌剤の投与.重症例ではニューキノロン剤とテトラサイクリン系抗菌剤療法が行われる.

検査材料

血液.

予防

現在までにワクチンは開発されていない.ダニの刺咬を防ぐことが極めて重要である.発生時期および発生地を知り,汚染地域に立ち入らない.野山に入る際は,(1) 皮膚の露出を少なくしダニの付着を防ぐ.(2)帰宅後,入浴時などに注意深く付着ダニの除去を行う(マダニは口器が長く皮膚に深く刺咬していて,入浴だけでは除去できない可能性がある).(3)ダニの忌避剤は有効である.

法律

感染症法の四類感染症に定められている.診断した医師は直ちに最寄りの保健所への届出が義務付けられている.

(渡辺 隆之)

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