日本紅斑熱(Japanese spotted fever)
感染症法:四類感染症
感染症法:四類感染症
マダニによって媒介されるリケッチアの疾患で,発熱と発疹を主徴とする.比較的新しい感染症で,我が国では1984 年に患者が初めて報告された.
キチマダニ,フタトゲチマダニ,ヤマトダニなどのマダニ類の刺咬により伝播する紅斑熱である.ダニに吸血される哺乳類は,全て感染動物となりうる.げっ歯類や鹿からリケッチアが発見されている.レゼルボアとしてはげっ歯類が重要で,本疾患ではアカネズミが最も重要と考えられている.牛や犬やその他の野生動物からも抗体価の高い動物が発見されている.我が国では本州以南のほぼ全ての都府県から発生の届出がある.季節的にはダニの活動期である春から秋に発生が集中する.
感染マダニ → 吸血 → 人や動物が感染.
ダニ,哺乳類.
Rickettsia japonica というリケッチアである.大きさ 0.3~0.5×0.8~2.0μm の短桿菌ないし双球菌で,偏性細胞内寄生性である.バイオハザードによる物理的封じ込めレベルは,BSL3 であり,普通の施設では取り扱いができない.
動物の症状は不明であるが,レゼルボアとなるので注意が必要である.感染犬の発熱事例の報告がある.
動物の潜伏期は不明である.
感染動物の診断と治療に関する報告はない.
マダニの駆除が予防につながる.
感染症法の四類感染症に定められているが,動物における届出義務はない.
日本紅斑熱の患者はベクターによる刺咬を自覚していることが少なく,刺し口がツツガムシ病よりも小さく皮疹も小さいため診断が難しいこともあるが,マダニによる刺し口を全身にわたって注意深く探すことによって,誤診のケースは少なくなる.
潜伏期は2~8日である.マダニの刺し口,発熱,発疹が本疾患のある.ツツガムシ病の主徴である.ツツガムシ病と異なりリンパ節の腫脹は目立たないことが多い.重症例ではDICの所見が観察される.
汚染地域への立入状況やマダニの活動時期に一致するなどの背景から本疾患を疑う.間接 ELISA 法や間接蛍光抗体法の血清学的検査によって確定診断を行う.遺伝子による診断は早期発見につながる.治療には,第一選択薬としてテトラサイクリン系抗菌剤を用いる.ベータラクタム系およびアミノグリコシド系抗菌薬は無効である.
血液,血清,痂皮を用いる.
現在までにワクチンは開発されていない.汚染地域におけるダニの刺咬を防ぐことが極めて重要である.発生時期及び発生地を知り,汚染地域に立ち入らない.野山に入る際は,(1) 皮膚の露出を少なくしダニの付着を防ぐ.(2)帰宅後,入浴時などに注意深く付着ダニ有無を観察し,見つかった場合は除去を行う.ただし,マダニは口器が長く皮膚に深く刺咬していて,入浴だけでは除去できないことが多いので,医療機関を受診するのが望ましい.(3)ダニの忌避剤を使用する.
感染症法の四類感染症に定められている.診断した医師は直ちに最寄りの保健所への届出が義務付けられている.
(2025年3月更新)