新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)

感染症法:五類感染症

概要

2019年11月,中国の湖北省武漢市付近で発生した新型コロナウイルス感染症は世界中に拡がり,いまだ終息していない(2023年末現在).コロナウイルス科のベータコロナウイルス属に属するSARS-CoV-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)が原因ウイルスである.様々な変異株が出現している.SARS-CoV-2はヒトだけでなく様々な動物への感染が報告されている.特にネコ科の動物には呼吸器感染症を起こすことが知られている.

疫学

2002年にはSARS,2012年にはMERSがアウトブレイクし,21世紀における3番目のコロナウイルス感染症として2019年に新型コロナウイルス感染症が出現した.本感染症は急速に全世界に拡がった.2020年1月30日、世界保健機構(WHO)は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言した。日本では感染症法における2類相当の感染症として対策が行われた.2023年4月には世界の累積感染者数が7億人以上になっていることから,この時点で世界の約10分の1の人々が感染していることになる.日本では2023年5月時点で感染者数が3,000万人を超えており,国民の約4分の1が感染していることになる.この時点で日本における致死率は約0.2%である.2023年5月にWHOはPHEICの宣言を終了し,日本においても五類感染症へ移行した。その後,日本では9月から10月をピークに第9波を経験したと考えられるが,12月には感染者数は減少している.

感染経路

主な感染経路は,ウイルスを含む飛沫が粘膜に付着することにより感染が成立する飛沫感染である.また,空中を浮遊するウイルスによるエアロゾル感染(空気感染)も成立している.ウイルスを含む飛沫や体液が付着した手指で粘膜を触ることによる接触感染も成立する.

感染源と考えられる動物

中国におけるアウトブレイクではコウモリの保有していたコロナウイルスが変異して人に感染したと考えられている.コウモリから他の野生動物へ感染し,野生動物から人へ感染するという経路も否定されていない.

病原体

コロナウイルス科,オルトコロナウイルス亜科,ベータコロナウイルス属,サルベコウイルス亜族に属するSARS-CoV-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)が原因ウイルスである.当初,武漢市で確認されたウイルスから変異を繰り返し,欧州株で感染拡大し,比較的病原性の高いアルファ株からデルタ株への変異、さらに感染拡大を起こしたオミクロン株へと変異している.2023年末における流行はオミクロン株の変異株が起こしている.

動物における本病の特徴

症状

新型コロナウイルスは飼い猫,飼い犬,飼育されているミンク,ライオンなどの動物園動物,オジロジカなどの野生動物で感染が報告されている.このように多くの動物が感染すると考えられているが,牛や豚などの家畜には感染していないようである.鳥類へも感染しないと考えられる.ネコ科の動物は感染しやすく呼吸器症状があらわれる場合もあるが,その多くは致死性ではない.ただし、ミンクの致死率は最大10%になるという報告もある.飼い猫の感染率は約4割になるという報告もあり,飼い主からの感染は高い確率で成立している.

潜伏期

動物では新型コロナウイルスが感染しても症状があらわれないケースが多いので不明であるが,犬や猫における報告では数日から1週間程度の潜伏期である.

診断と治療

鼻腔や咽頭の拭い液、唾液からRNAを抽出してPCRを実施する.PCRは人における検査と同様に行う.疫学的には血清を用いた抗体検査(ELISA)と中和抗体の測定を実施する.海外の動物園でゴリラに感染したケースでは抗体治療が行われたが,動物への治療方法は確立されていない.

予防

飼い猫や飼い犬は飼い主から感染し,動物園動物は飼育者から感染する。したがって,現在の新型コロナウイルス感染症の感染源は人になっているので,動物に感染させないような配慮が必要である.新型コロナウイルスに限らないが,野生動物からの感染には気を付けなければならない.

法律

特に規制されていない.

人における本病の特徴

基本的には呼吸器感染症であるが,消化器感染症も起こす.全身感染を起こすと重症化するケースが多い.高齢者や基礎疾患のある人では重症化しやすい.これまでの変異株ではデルタ株が最も重症化率や致死率が高く,オミクロン株が低いと考えられるが,今後のレトロスペクティブな調査で明らかになるであろう.

症状

変異株によって症状は異なる.新型コロナウイルス感染症に共通する症状としては1週間前後の潜伏期を経て発熱や咳などの呼吸器症状に始まり,重症化すると深刻な肺炎による呼吸困難を呈するのでエクモによる治療が行われる.頭痛や下痢症状がみられることもある.後遺症として倦怠感の持続,味覚障害や嗅覚障害が起こることもある.

診断と治療

鼻腔や咽頭拭い液などを用いたPCR検査が行われる.イムノクロマト法による簡易抗原検査キットも普及している.深刻な呼吸器疾患ではX線撮影が必要である.抗ウイルス薬としてモルヌピラビル,リトナビル、エンシトレルビル(塩野義製薬のゾコーバ)が有効である.また,ロナプリーブなどの中和抗体薬が用いられている.

予防

いわゆる「三密」を避けることは新型コロナウイルス感染症の予防として重要である.マスクや手指の消毒も有効である.変異株に対応したmRNAワクチンが使用されている.

法律

感染症法の五類感染症である.

(2024年3月作成)

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