カプノサイトファーガ感染症はグラム陰性桿菌であるCapnocytophaga canimorsus及びC. cynodegmiによる人獣共通感染症である.この菌は犬,猫の口腔内に常在し,咬傷やひっかき傷により感染する.人から人への感染は報告されていない.
1976年における米国の症例が最初であり,その後2017年末までに世界中で約500例の報告がある.国内では1993年から2017年末までに93例の報告があり、そのうち19例が死亡している.患者は40歳以上が全体の95%を占めており,性差としては73%が男性,27%が女性だった.感染原因は犬の咬掻傷が56%,猫の咬掻傷が22%,犬・猫との接触歴のみが20%,不明が2%だった.
犬や猫の口腔内には通性嫌気性グラム陰性桿菌であるCapnocytophaga属菌が常在し,現在以下の3菌種が確認されている.
C.canimorsus
C.cynodegmi
C.canis
いずれも咬傷・掻傷による本症の原因となるが,このうち,重症例の大半はC. canimorsusである.
生化学的にはオキシダーゼ,カタラーゼ共に陽性であり,コロニーは淡黄色,淡灰白色,あるいは淡桃白色だが,コロニーで両者を判別することは困難である.
口腔内の常在菌であるため犬や猫は無症状である.鈴木等1)が2004年から2007年にかけて行った調査では,C. carmonisusは犬の74%,猫の57%が保有し,C. cynodegmiは犬の86%,猫の84%が保有していた.2菌種の両方あるいはいずれかを保有する割合は犬92%,猫86%である.
1)Suzuki M.,Kimura M., Imaoka K., et al. : Prevalence of Capnocytophaga canimorsus and Capnocytophaga cynodegmi in dogs and cats determined by using a newly established cpecies-specific PCR. Vet. Microbiol. doi10.1016/j.vetmic2010.01.001,2010
特に規制されていない.
発熱,倦怠感,嘔気,下痢,筋肉痛,頭痛などから始まり,重症化すると敗血症に至る場合が多い.これまでの死亡率は約30%とされる.
糖尿病,アルコール依存症,高齢者など免疫機能の低下した人が感染しやすい傾向がある.また,患者の大半が40歳以上である.多くは動物との咬傷を含む濃厚な接触歴があるが,接触歴が明らかではない例もある.
獣医師が抜歯の際に歯の破片が眼に入り角膜炎を起こした症例の報告2)がある.
2)de Smet M.D., Chan C.C., Nussenblatt R.B., et al. : Capnocytophaga Canimorsus as the cause of Chronic corneal infection. Am. J. Ophthalmol. 109(2) : 204-242, 1990.
1~14日(多くは1~4日).
様々な抗菌薬が有効.ペニシリン系,テトラサイクリン系,第3世代セフェム系が一般的である.
ワクチンはない.
特に規制されていない.