ブルセラ症(Brucellosis)

感染症法:四類感染症家伝法:家畜伝染病

概要

ブルセラ属菌により発熱,関節炎などを起す感染症である. 牛,豚,山羊,めん羊,犬などに感染することが知られている.

疫学

本病は世界中に分布しているが,地中海沿岸,中東,中南米などで多く報告されている.わが国では家畜伝染病予防法に基づき,抗体陽性の牛は淘汰されているため,現在,発生はないと考えられる.犬では2007年1月に大阪府和泉市で犬の集団感染が報告された他,2008年8月には東京都と千葉県で集団発生が報告されている.

2018年7月,長野県在住の渡航歴のない男性より既知のブルセラ属菌によるものではないブルセラ症が報告された.その後,病原体の遺伝子解析により自然宿主をげっ歯目とするB. suis biover 5と近縁であることが示され,男性がどこかでこの菌を保有するげっ歯目と接触した可能性が示唆されている.

感染経路

主な感染経路は流行地における家畜との接触,殺菌処理されていない乳酪製品の摂取,胎盤,母乳,性行為を介した人−人感染も報告されている.

保菌動物

人への感染を起こすのは,Brucella Abortus,Brucella Melitensis,Brucella Suis,Brucella Canis である.

病原体

ブルセラはグラム陰性の小桿菌で,莢膜,芽胞,鞭毛を有さない.培養では菌の発育が遅く,4週間ほどかかる.

動物における本病の特徴

症状

雌では妊娠後期の死流産が主徴である.雄では精巣炎や精巣上体炎を起こし,雄の不妊症となる.しかし,雌雄ともに臨床症状はほとんど示さない.

潜伏期

一般に1~3週間.

診断と治療

乳汁,死流産材料,血液からの菌の分離.血清診断は,急速凝集反応,試験管凝集反応,補体結合反応など.遺伝子の証明.家畜では摘発淘汰.犬ではテトラサイクリンの長期投与.

予防

ワクチンはあるが,日本では使用しない.

法律

家畜伝染病予防法の監視伝染病(家畜伝染病)に指定されている.対象動物は牛,めん羊,山羊,豚,水牛,鹿,いのしし.診断した獣医師は直ちに最寄りの家畜保健衛生所へ届出る.感染症法でも四類感染症に定められているが,動物における届出義務はない.

人における本病の特徴

ブルセラ症は発熱や関節炎を主徴とし,さまざまな臓器に感染する.熱型は波状熱が知られているが必発ではない.本病診断のためには流行地への旅行歴,現地での乳製品の摂取の有無などの聞き取りが大切である.また,実験室感染もあるので,職業から推定できることもある.

症状

発熱,発汗,関節痛,疲労,うつ状態などの症状のほか,リンパ節腫脹,肝腫,脾腫がみられる.最もよく見られる合併症が腸骨坐骨関節炎,膝・肘関節炎,椎間板炎,骨髄炎,滑膜包炎.消化器系では悪心,嘔吐,体重減少,泌尿器では精巣炎が見られる.死亡例では心内膜炎を併発していることが多い.

潜伏期

2~3週間.

診断と治療

血液などからの菌の分離.凝集反応.PCR法による特異的遺伝子の検出.治療には,ドキシサイクリン,アミノグルコシドの併用,またはドキシサイクリンとリファンピシンの併用,他にニューキノロン剤やST合剤も有効.

予防

未殺菌乳製品を食さない.感染動物,その死体,流産時の汚染物などの取り扱いに注意する.

法律

感染症法の四類感染症に定められている.診断した医師は7日以内に最寄りの保健所への届出が義務付けられている.

(佐藤 克)

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